天国のジョブズは何を想う。アップルが賭けに出た「VisionPro」は何が凄いのか?

New,York,,Ny,,Usa,-,July,9,,2022:,Apple,Logo
 

6月5日、アップルが満を持して発表したVisionPro(ビジョンプロ)。早くも大きな話題となっている世界初の「空間コンピュータ」の実力は、一体どれほどのものなのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、同製品の驚愕のスペックとアップルの興味深い「ビジョンプロの位置づけ」を紹介。その上で、メタバースの分野で賭けに打って出た同社経営陣に対する率直な思いを綴っています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年6月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

さすがはアップル。「VisionPro」で打って出た壮大な賭け

6月5日、アップル社は恒例のWWDC(開発者会議)の開会にあたって、大きなプレゼンを行いました。そのプレゼンの中で、新型ハード、新世代の各OSに続いて、下馬評通り、今回は、遂に「アップル版のメタバース」が公開されています。

VisionPro(ビジョンプロ)と命名された、新しいウェアラブルと言いますか、ゴーグル型端末は、2024年の年初に発売。価格は3,499ドル(約49万円)とかなりの強気です。

驚いたのは、アップル社は、このVR・ARマシンの環境を、ゲームなどのエンタメ端末というよりも、一種の「ヴァーチャル・オフィス」として紹介したということです。

とにかく、ハードのスペックは猛烈で、23Mピクセルの超高精細有機ディスプレイ、3重レンズ、各種センサー類、ライダー、視線入力、最新のM2オリジナルCPU、加えてR1プロセッサと、考えられることは全部入っているという仕様です。

ビジネス目的といっても、グーグルの迷走した「グラス」とは違って、そこはアップルらしい「知的創造の場としてのオフィス空間」をARに移築するという提案となっています。

簡単に言えば、視野の中に大きな画面が3つとか4つ展開され、それが空間上で指を動かすことで作動する仮想キーボード(カメラが指の動作を認識)や、空間上でのクリックやスワイプ動作でコントロールするという考え方です。発想自体は先行各社と大きくは変わりませんが、とにかくビジネス需要を柱にするというのが、それも知的創造の場、ツールと位置づけたのは興味深い動きです。

実際の使用法の例としては、1つの画面には進捗管理のアプリが、あるいはディカッションのクルップボードが、また別の画面にはドキュメントが、そして中央にはZoomなどのビデオ・コンフェレンス画面が置かれて「対話の相手は等身大でそこに」展開されるというのです。

最大の謎は、ギアを被っている「自分」の画像をどう撮るのかです。これは、このデバイスに「自画像の3D高精細イメージ」を生成するカメラと処理ソフトが内蔵されており、これによって「動く高精細アバター(デジタル・ペルソナ)」を立ち上げる、その上で自分の喋る言語に応じて、アバターを動かすというARアプローチで対処するとしています。

その他の、ビジネス・プロフェッショナル用途としては、

「アナトミー、つまりデジタル3Dの解剖学指導」

「空力に関する風洞実験のVRシミュレーション」

「ロボット製造ラインの動作シミュレーション」

などの実用化を進めているということでした。

一方で、エンタメ用途ということでは、ディスニーの創業100周年記念事業として、アライアンスを強化するとしていました。また、パーソナル・プラネタリウムの機能もアプリで展開予定ということです。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 天国のジョブズは何を想う。アップルが賭けに出た「VisionPro」は何が凄いのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け