なぜ「ものぐさな恋人」がサプライズで起死回生を試みても失敗するのか?

 

【ラベリング】

「私たちの番組では『ロマンチック』をテーマにしているのですが」と担当者は続けます。

「『サプライズ』はいつも成功するとは限らないんですよね」

「パーティーやるなら、一緒に準備したかった」とか「こんなことにお金かけるんだったら、そのお金を二人の将来のために使いたかった」といった具合に、相手のネガティブな反応につながる場合も少なくないのだそうです。

こうした失敗例も説明するためには「ゲイン・ロス効果」だけでは不充分です。

そこで援用されるべきは、シャクタ─(Stanley Schachter 1922-1997)とシンガー(Jerome Everett Singer 1934-2010)の「情動2要因理論(two-factor theory of emotion)」です。

「情動2要因理論」は、私たちの情動が「生理学的な反応」と「その反応への認知的解釈(ラベリング)」の二つの要因によって生じるという説です。

たとえば、就眠中に身体を触られた女性は、緊張し、眼が覚め、心拍数が増加し、血圧も上がります、こうした肉体的「生理学的反応」をもとに、彼女の脳は、それが恋人による愛撫であると「解釈(ラベリング)」することにより、そうした一連の感覚がとてもセクシーで自分の性感を高めるものと感じられ、性的興奮も高まり、悦びの甘い声を漏らすのです。

ところが、同じ「生理学的反応」が生じ、そのことを彼女の脳が受け止めたとしても、彼女が一人で就寝していたことを思い出し、その愛撫が侵入したストーカーによるものかもしれないと判断した瞬間、彼女は恐怖を感じ、悲鳴を上げます。

同じ「生理学的反応」が肉体に生じたとしても、脳がそうした変化をどのように「解釈」し「ラベリング」をするかによって、情動反応は180度異なったものになるのです。

ですから、たとえ「サプライズ」による「ゲイン・ロス効果」により、強い「驚き」の反応(驚愕反応)を生じさせることに成功したとしても、相手がそれにどのような「ラベリング」をするかで、相手の感情はいかようにも変わるのです。

驚愕反応は心拍数や呼吸、血圧の増加、緊張、覚醒、発汗、などの生理学的な変化を引き起こしますが、それは恋愛感情や性的興奮を高める場合があると同時に、怒りや恐怖、嫌悪などのネガティブな感情を引き起こす場合もあるのです。サプライズが引き起こす反応は生理学的なレベルにおいてはニュートラルなものであり、場合によっては単なるストレスにもなりかねません。

その違いを引き起こすのが、相手の脳の「ラベリング」機能です。

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