なぜ「ものぐさな恋人」がサプライズで起死回生を試みても失敗するのか?

 

【信頼関係】

本来なら恐怖につながるはずの状況により生じた、こうした生理学的な反応が、結果的に相手の性的興奮や恋愛感情につながる場合が、いわゆる「吊り橋効果」です。

高くて揺れる、恐ろしい吊り橋を渡り終え、心拍数も呼吸も血圧も高くなり、発汗や手の震えなどが残っているような状態で、魅力的な美人から話しかけられた男性の多くは、彼女に対して恋愛感情を抱き、後日、研究室に電話をかけて来ました。

彼女のインタビュー内容に偲びこませた「TAT検査」(絵画統覚法検査)の結果でも性的な反応が増加していました。一連の興奮反応が眼の前の女性に対する恋愛感情であるとラベリングされたわけです。

同じように、恋人どうしで乗ったジェットコースターや二人で体験したお化け屋敷は、二人の性的感情(上品に言えば恋愛感情)をさらに高めてくれるのです。

こうしてみると、吊り橋効果もサプライズも、成功するかどうかは「ラベリング」次第です。

ラベリング自体は瞬時に、またほとんど「無意識」に行われますが、そのラベリングのやり方が事前にどのように「設定」されているかは、脳がそれまでに体験した「経験」と周囲の状況についての「総合的な認識」によって決まるのです。

「ラベリングの設定」を「好意的な解釈傾向」の方向へ重み付けしておくためには、普段から相手に対して「接近行動」を繰り返している必要があります。

「接近行動」は心理学用語で、相手との心理的な距離を縮めるための行動です。相手をさりげなく援助したり、相手が喜ぶようなプレゼントをしたり、相手にとって有効な情報を提供したり、楽しみの機会を与えたり、相手が嬉しくなってあなたと一緒に居たいと思うような働きかけ一般が「接近行動」です。要は、相手のためになり、相手が楽しくなるような行動のことです。

こうした「接近行動」の積み重ねが、あなたと相手の間に「信頼関係」を築いてくれるのです。「信頼関係」が強固なら、いきなりのサプライズにもスリル満点のデートにも、相手はポジティブなラベリングをしてくれるはずです。

逆に、ものぐさな恋人が、ここ一発、ドラマチックなサプライズで「起死回生」のチャンスを掴もうといった試みが失敗に終わりがちなのは、普段から「信頼関係」を築いていないからなのです。

「まめ」に相手への「接近行動」を繰り返すという努力を怠って、「一発勝負」に賭けてもあまり良い結果は期待できないでしょう。お金をかけて、派手な演出のサプライズを仕掛けても、そうした行動が「自己顕示欲」の強さや「人をマニピュレートする(操る)ことが好き」な「支配的性格」から出たものと相手に「ラベリング」されてしまうかもしれません。

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