「処理中の汚染水」を「海洋投棄」という真実を伝えない日本メディアの大問題

uj20230828
 

8月24日13時、海洋放出が開始された福島第一原発の処理水。政府は安全性を強調しますが、漁業関係者らからは不安の声が上がっているのが現状です。この問題を論じているのは、ジャーナリストの内田誠さん。内田さんは自身のメルマガ『uttiiジャーナル』で、今回の国の行為は「処理水の海洋放出」ではなく「処理を始めた汚染水の海洋投棄」にほかならないとの見解を示すとともに、真実を伝えない日本メディアの姿勢を問題視しています。

「処理水」ではなく「処理を始めた汚染水」、「海洋放出」ではなく「海洋投棄」という言葉の問題

東京電力の福島第一原子力発電所の事故から10年以上経って、いわゆる処理水について海洋放出をするということになりました。政府はそういう決定をしました。もうその決定からちょっと経ちますけどね。

でも、それっていうのは非常におかしなことで、福島県の県漁連と政府および東電の間でも、話し合いで国民及び県漁連ですけど、漁師さん側から見て納得できないような形で放出する、納得しないのに放出をすることは無いという約束があって、それを今回破るという面が一つ。

それから、まあ、いろいろ国際的な反響を生んでるっていうことはちょっと置いておきますけど、これって、一つは言葉の問題がありますよね。もうメディアはこぞってみんな「処理水」「処理水」って言ってるんだけど、おかしいでしょ。処理水っていう言い方をすると、つまり処理をし終えた、完全に処理しきった水っていう感じがしますよね。

でもストロンチウムなどは完全には取りきれてないんですよね。基準よりは低いからいいんだっていうことになってるだけで、事故によって、事故の…何て言うんでしょうね、事故によって生まれた汚染された水であって、確かに処理は始まってるから、その処理をし始めた水ではあるんだけれども、処理水と言ってしまうことには問題がある。あくまで「処理を始めた汚染水」っていう風にまず考えなきゃおかしいということが一つ。

それと、言葉の問題で言うともう一つあって、「海洋放出」と言いますよね。でも、まあ基準云々、濃度の基準というのは正直よくわかんないですけれども、海に本来流すべきでないものを流すわけでしょ。これ「海洋投棄」ですよね。おそらく法律用語として「投棄」じゃないっていう抗弁を官僚の皆さんはなさるんだろうと思いますけど。

だってね、今現在タンクがあるところから相当沖合の方まで引っ張っていって、しかもそれをわざわざ薄めてですね、まあそれは風評被害を防ぐためだっていうのかもしれないけれども、そんなことをしなきゃいけない水をですよ、わざわざ海の中に捨てる。放射線の量で言って数百兆ベクレル、薄めようがなにしようが、それだけの放射性物質を海中に投棄するわけですよね。だからこれは、アルプスという機械によって処理を始めた処理中の汚染水を、「海洋投棄」する、そういう話だと思うんです。

でもこんな風に表現するメディアってないですよね、おそらくね。まあメディアこぞって「大丈夫だよ」「安全なんだよ」っていう、もちろんそういうふうに直接には言わないかもしれないですけれど。そういう気分を醸成するのに役立つような用語法を、徹底して取っているのが現在のメディアのあり方だと思います。やっぱりこれはとてもよろしくないことですよね。

それから、風評被害が心配なんだっていう形でこの問題をまあある種まとめ上げていくっていう感じになってるんだけど。先ほどもちょっと言ったようにこれって当初は800兆ベクルっていう数字はどっか出てましたけど、とてつもない大量の放射性物質を環境外に放出するということじゃないですか環境内ね。これによって何がどう起こるかって、多分誰にもわからない世界ですね。しかも30年間やるって言ってるんだよね。まあ少しずつやるからなんでしょうけど。30年の間に廃炉が済んでいるわけではないから…。

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