国会議事堂中央広間の四隅の台座。1つある「空き」に相応しい人物は誰か?

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国会議事堂の中央塔の真下にある吹き抜けの中央広間の四隅には、議会政治の基礎を作ったとして3人の立像があり、1つは台座だけが置かれています。週刊誌の対談でその空き台座に相応しい人物は誰かという話をしたと振り返るのは、評論家の佐高信さんです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』ではさらに、来年夏にも発行されるという新紙幣の顔について言及。フランス出身の俳人マブソン青眼氏の指摘にショックを受けたと語り、新紙幣の顔にすべき人物の名前をあげています。

紙幣の顔

『サンデー毎日』の8月20日&27日号で、「国会の生き字引」と言われる平野貞夫と暗殺された首相、原敬について語った。本題に入る前の平野の話が興味深かった。

国会議事堂の中央広間の四隅に台座があり、その3つに板垣退助、大隈重信、伊藤博文の立像が建っているという。大日本帝国憲法発布50年を記念して3つの立像が制作されたが、なぜか1つだけ空いている。

さすがに平野も理由はわからないのだが、3人とも貴族院議員なので、民衆を代表する衆議院議員で平民宰相の原敬こそふさわしいのではないか、と平野は主張する。

三木武夫が衆議院議員在職50年の表彰を受けた時に、三木をという声も出たが、平野によれば「総スカンを食う羽目」になった。

やはり4人目は原がぴったりだろう。原は政党政治の健全な発達を阻害するのは軍部と検察だと指摘した。それを踏まえて私は言った。「いまは軍部はなくなったが、一連の軍拡路線で復活する懸念はないのか。検察は、安倍晋三政権時代に黒川弘務氏(元東京高検検事長)を使って、公正公明であるべき検察を、時の権力寄りに偏向させた。簡単に言えば、巨人─阪神戦で審判が巨人のユニホームを着ていた」

板垣や伊藤は紙幣の顔になっているが、それでいいのか?とりわけ伊藤は韓国や北朝鮮の人たちには不評だった。財務省は来年夏ごろに新紙幣を発行すると言っている。1万円札の肖像が渋沢栄一、5千円札が津田梅子、そして千円札が北里柴三郎だというのだが、どういう基準で誰が決めたのか!

紙幣の顔の話でショックを受けたのは、フランス生まれのマブソン青眼に『俳句界』の対談で次のように言われた時だった。フランスでは戦争に反対して逮捕された人たちは戦後、石碑を建てられたり、学校の名前になったりして称えられている。たとえば、『星の王子さま』でも知られる詩人のサン=テグジュペリは50フラン札にもなった。それに対して日本は、と言いながら彼は渡辺白泉の名を挙げたのである。

「戦争が廊下の奥に立ってゐた」という句を作って弾圧された渡辺を千円札の顔にすれば日本は国際的に評価される、とマブソンは言った。私はアフガニスタンを緑の大地にした中村哲を紙幣の顔にすることを提案したい。残念ながら渡辺の名を知る人は日本でも少ない。しかし、中村の名は世界に知れわたっている。武器によらない平和の象徴、まさに日本国憲法のシンボルとして中村はふさわしい。

ちなみに私も紙幣の顔になったことがある。1988年10月1日にNHKで放送された「ようこそ先輩」で私は母校の小学生に紙幣をつくらせたが、中の1人が私の似顔絵を描いた1万円札をつくってきた。そこには「大事に使えよ、不景気なんだから」とも書いてある。

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