日本語の「オノマトペ」が世界の言語の中でも群を抜いて多いワケ

Tokyo,,Japan,-,June,03,2021:,Life,Sized,Standees,And
 

擬音語、擬声語、擬態音の総称とされる「オノマトペ」。実は日本語のオノマトペは他言語に比べて非常に多く、特に擬態語の数の多さは群を抜いているそうです。今回のメルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』では、朝日新聞の校閲センター長を長く務め、ライティングセミナーを主宰する前田さんが、日本語を使う“日本語人”の脳の構造が他の言語を使う人とは違うという実験結果を紹介。音で感性を表現し捉える力に長けた日本語の秘密を明かしています。

音と脳は、日本人の感性を育んでいる

丸い曲線でできたアメーバのような図形と、ギザギザの直線でできた星のよう図形を被験者に見せます。そして、一方の名前がブーバで、もう一方がキキという名前だと伝えます。そして「どちらの図形がブーバでキキでしょうか」と聞くと、約98%が「曲線でできた図形がブーバで、ギザギザの直線の図形がキキだ」と答えたという結果が出ました。

これは、ドイツの心理学者ヴォルフガング・ケーラーが1929年に報告したものだと言われています。この実験は言語(ことば)として発せられた音と図形の持つイメージがどのように印象づけられているかを示したものです。年齢や母国語にほとんど関係なかったというのが特徴です。音がもたらす概念に、文化や言語の違いを越えた共通性は見つからないと言われています。しかし、音と図形に関してはそこに共通したものがありそうです。

音とイメージといえば、代表的なものが「オノマトペ」だと思います。オノマトペは「擬音語」「擬声語」「擬態音」を包括的にいうことばです。擬声語は、ものの音や人。動物の声などを表す語で、擬音語とほぼ同様の概念です。たとえば「ざわざわ」「ワンワン」「バタン」などがその類いです。

擬態語は物事の状態や様子などを感覚的に音声化して表現するものです。「にやにや」「うろうろ」「まったり」「ふんわり」「てきぱき」などがあります。広い意味では擬声語の一種とも言えます。しかし、狭い意味での擬声語が自然の音や人間・動物の音声を直接的に言語にしています。それに対して擬態語は、音には直接関係のない事柄の状態を言語に写し取っているものだと言えます。

日本人脳は左脳で論理以外の音を感知する

日本語には、この擬態語が豊富です。音で感性を表したり捉えたりするのが得意な脳の構造を持っているとも言えそうです。実際に角田忠信医学博士は、著書『日本語人の脳』(言叢社)のなかで、西洋人と日本人とでは、左脳(左半球)と右脳(右半球)での受け止めが異なることを、実験を通して報告しています。

著書には、こう書かれています。

非日本人では左の言語半球優位の音は言語音に限られ、持続母音、感情音、自然音の大部分は右半球が優位となることを確認した。すなわち、言語、論理の左半球と情動、自然界の音、機械音を扱う右半球とにはっきり分離している。一方、日本人では左半球は言語、論理以外に感情音、自然界の音、邦楽器の音などに優位で右半球優位の音は西洋楽器音や機械音に限られる。日本人と非日本人の差は日本語の話言葉で作られた無意識で働く自然認知の枠組みの違いによるもので、これが現在でも日本人の心情の基礎になっていると考えられる。

これが直接、擬態音を生み出すことにつながるかどうかは、検討を要するにせよ、心情に何らかの関係があることは理解できます。

この記事の著者・前田安正さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 日本語の「オノマトペ」が世界の言語の中でも群を抜いて多いワケ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け