2022年に「いじめは犯罪」と定められたフランスでは、いじめの厳罰化への取り組みがなされています。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』を発行する、同ネット代表の井澤一明さんは、そのフランスでのいじめ対応と日本の「あまりにも加害者に優しい対応」を比較しながら紹介しています。
「優しすぎる教育」の危険性
9月5日に、「フランスのいじめ厳罰化「加害者を転校させる」に踏み切った背景」(東洋経済オンライン)という記事が配信されていました。
この記事からポイントを抜き出してみます。
- 9月に新学年が始まったフランスでは、学校内でのいじめが確定した加害者の生徒を、別の学校への転校させることが可能になった。
- これまでは被害者の要請があれば転校命令を出せたが、9月からは校長と自治体首長の判断で強制的に転校させることが可能になった。
- いじめによる自殺で娘を失ったノラ・フレイズ氏が設立したいじめ撲滅運動協会は教師と生徒を対象にした調査を依頼し、その結果によると、少なくとも41%が「反復的かつ継続的な言葉や身体的、心理的暴力の被害の経験がある」と答えている。そのうち54%が中学校のとき、23%が小学校のときだった。
- 国民教育省によると、近年、毎年約70万人、生徒の約10人に1人が学校でいじめ被害に遭っている。
- フランス・ユネスコは2019年、フランスの初等・中等教育生徒の22%がいじめの影響を受けていると推定している。
- いじめの定義は、「1人以上の生徒がクラスメート(あるいは学校内外の生徒)1人に対して行う反復的な身体的暴力、言葉や心理的な暴力」とされ、「いじめ行為は犯罪」として認識されている。
- 昨年2022年3月に「いじめが犯罪」と定められた。
- 2022年3月の法改正で、嫌がらせを受けた被害者が自殺または自殺未遂をした場合、最高で懲役10年、罰金15万ユーロ(約2370万円)が科される。(注)さらに8日間以下の完全な就学不能を引き起こした場合、3年以下の懲役および4万5000ユーロの罰金が科され、8日間を超えて完全に就学不能となった場合は、5年以下の懲役および7万5000ユーロの罰金が科される。
- すべての教職員が教育現場でのいじめと戦う訓練を受けることが義務づけられている。
- いじめ防止措置は3段階に分類されている。第1レベルは教育チームと生徒、保護者の話し合いによる和解解決で、懲戒処分はない。第2レベルは、いじめが継続された場合、国の教育機関の教育心理学者や医療関係者が介入し、解決に取り組む段階。第3レベルは被害者生徒の安全に重大な脅威を与えている場合、強制転校も可能。
この記事から、フランスでは「いじめは犯罪」と法律で制定されているということ、加害者に対して「強制転校」を校長が命じることができること、さらに、被害者が自殺、自殺未遂をした場合に、加害者に懲役、罰金の重い刑罰が科せられることが分かります。
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