最近、NTTドコモがネットワーク品質の低下を指摘されているのをご存知でしょうか。その指摘は決して根拠のないものではないようで、同社は改善策について説明しているそうです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、ドコモと比較してソフトバンクのネットワークの方が安定している理由を考察。予想された「Massive MIMO」の効果は限定的で、第1の理由に買収等による基地局資産の活用をあげます。さらに、5Gに関してドコモのようにはこだわらず、4G周波数を転用したことも安定化の理由としてあげています。
ソフトバンクにあって、NTTドコモにはないもの「Massive MIMOはある程度、効果が出ている」
この春ぐらいからNTTドコモのネットワーク品質が落ちているといわれ、同社では改善策について説明を行ってきた。そのなかで、「Massive MIMOは検討している段階」という回答が話題を呼んだ。なぜなら、ソフトバンクは4G時代から「5G技術を先取り」といいながら、Massive MIMOを導入し、ネットワークの安定性向上を図ってきたからだ。
なぜ、NTTドコモのネットワーク品質が落ち、ソフトバンクのネットワークは安定しているのか。そのひとつの答えが「Massive MIMO」かと思われたのだ。
そんななか、ソフトバンクの関和智弘CNO(チーフ・ネットワーク・オフィサー)は「突出した効果が出ているかは分析できていないが、効果はある程度出ていると考えている」と、やや控えめなコメントであった。
確かに、エリクソンが出している資料を見ても、日本のおけるMassive MIMOの導入率は、韓国や中国と比べても極端に低かったりする。本来、ソフトバンクでもMassive MIMOを積極的に導入しているかと思いきや、必ずしもそうではないようなのだ。
その点、かつてエリクソンの関係者は「日本でもMassive MIMOを訴求していきたいが、アンテナが巨大で、日本では設置場所の確保が難しい。エリクソンでもアンテナの小型化に尽力しているのだが」という話であった。
Massive MIMOのアンテナは大きく、さらにビルの屋上から道路や広場に向かって電波を飛ばせる位置が望ましいとされている。つまり、ビルの屋上の端っこに置くのが理想なのだが、「そういった場所はビルオーナーが結構、嫌がる」(エリクソン関係者)ということであった。ソフトバンクとしても、Massive MIMOは適材適所で活用しつつ、従来のアンテナ基地局に厚みを持たせることでトラフィック対策をしていくとのことであった。
ただ、ソフトバンクの強みとして効いてくるのが、会社の成り立ちだろう。ソフトバンクはボーダフォンを買収、さらにウィルコムを救済したり、イー・モバイルを傘下に収めてきた。特にウィルコムはPHSということで、20万近い基地局を持っているわけで、そうした場所の活用が結果として、厚みのあるネットワークを生み出しているのではないだろうか。
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