漫画やアニメに“消滅”危機。異常な「盗用」抗議や嫌がらせ、優秀なクリエイターを守る方法は?

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日本が世界に誇るべき産業の一角を占める、漫画アニメ産業。しかし現在までのところ、クリエイターたちがその身を自身で守ることができるほどの収益の分配はなされていない、というのが事実のようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉さんが、先日報じられた有名アニメ監督への迷惑行為等々を取り上げ、業界が抱える問題の本質を考察。その解決がなされなければ同産業自体が消滅しかねないとの見解を記しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年10月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

アニメ産業は、異常な迷惑行為にどう対処したら良いのか?

京都アニメーション事件は、今も尚、被害者のご遺族をはじめとして、多くの人の心に傷を残しています。余りにも悲惨な事件であり、何としても加害者を真摯な謝罪に持ち込むとともに、再発の防止をしてゆかねばなりません。

そうした思いに反するように、アニメ産業では、クリエーターへの悪質な迷惑行為が急増しているという報道がありました。毎日新聞(電子版)によれば、有名なアニメ監督の元に、SNSのDMで「私の作品が盗用されています。深い傷を心に負いました」などという、全く心当たりのない「抗議」が寄せられたそうです。

相手は全く見ず知らずの女性で、同様の「抗議」は仕事仲間にも届き、監督が謝罪しないと、これを「名誉毀損(きそん)」「侮辱」だと主張したそうです。身勝手な「抗議」は、監督の仕事先である大手出版社やレコード会社、アニメ会社、芸能事務所、イラスト画家などにも次々と送られて、事態は関係するイベントの中止にまで発展したそうです。

監督によれば、この女性の主張は「自分が描いた画をトレースして盗用した」というのだそうですが、全く一致しない勝手な主張だったそうです。悪質な行動に対して、監督は警察に相談すると共に、相手を告訴して裁判にすることで、「同業者を守る」、つまり再発を減らしたいとしています。

監督が厳しい行動を選択したのは、このような行動が繰り返されたら、あるいは許容されたら、それこそ京アニ事件のような凶悪な事件が繰り返されるという危機感だと思います。

そう考えると、これはアニメではなく、漫画の世界ですが、2012年から13年にかけて発生した『黒子のバスケ脅迫事件』のことが思い起こされます。これは、漫画家とその周囲に対する毒ガスなどを使用した執拗なまでの攻撃が繰り返されたもので、犯人は逮捕されて実刑が確定しています。

この事件は、全く身勝手に「漫画家としての成功者と自分との格差」を動機とした「無敵の人」の攻撃だとして、話題になりました。事件としては少し異質ですが、今回のアニメ監督への身勝手な「抗議」や、同じように全く身勝手な京アニ事件とも共通する部分があるように思います。

共通する部分ということでは、例えばですが漫画やアニメの場合は、そのような危険な発想を持った人が、異常なあこがれと嫉妬などを持ちやすい、そんな印象があり得るかもしれません。ですが、これは、別のメディアや経済活動と比較して、特に漫画やアニメは危険だということは証明はできないと思います。

成功者をねたんで、好感が憎悪に変わるとか、勝手に自分のアイディアが盗用されたなどと思い込む、これは芸能や活字、実業などでもいくらでも可能性はあるからです。

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