プロ野球の優勝パレードまで政治利用。維新と“安倍トモ”の怪しい動き

 

万博をPRする福岡市長の民主主義を欺こうとする姿勢

「万博を大阪だけでなく、九州、福岡のものにもしていく。維新かどうかの話でなく、日本にとって失敗できない」(*3)

9月24日、福岡市でのイベントで市の高島宗一郎市長はこう熱弁をふるう。横には、日本維新の会の吉村大阪府知事の姿が。その入れ替わりで、北九州、佐賀県武雄、大分県別府、宮崎、鹿児島各市の市長ら6人が登壇。

万博の訪日客は350万人と想定され、そのインバウンド需要を関西以外にも波及させる構想の実現を目指すことで一致した。

大阪を訪れる観光客を西へと、九州へと。大阪・関西万博を機に、福岡市の高島市長は九州、西日本の11首長と連携し、インバウンドで訪れる訪日客を取り込む観光周遊ルートづくりである「西のゴールデンルート」を進めると表明。

ゴールデンルートとは大阪から東京までの観光地をつなぐ訪日客の王道コース。しかし、それに対抗する形で、大阪から九州を結ぶ西のゴールデンルートを構築しようとする。

従来、九州への訪日客は距離的に近い中国や韓国など東アジアが大半で、滞在期間が長く、消費額も多い欧米人の誘客が課題となっていた。

欧米からやってくる観光客は、東京や大阪に降り立って周遊する傾向にあるが、大阪から西側へのルートが確立されているのは被爆地・広島までという。

高島氏は2010年年の初当選以来、自民党の故・安倍晋三元首相らとの良好な関係を背景に、国家戦略特区への指定をはじめ、さまざまな施策を推進。一方で、元日本維新の会代表の橋下徹氏をはじめ、維新関係者との親交もある。

しかし、「類は友を呼ぶ」というもの。「改革」とは威勢は良いが、自民党というオールドスクールを批判どころか利用し、“権威”と“パターナリズム”と“ポピュリズム”で民主主義を欺こうとする姿勢は、彼らに共通する。

そのうち、「福岡に万博を!」というのでは?

大阪万博の現場で進む“ありえない”動き

地方行政の万博推進の動きの一方、現場では“ありえない”動きが進んでいる。万博のパビリオンの建設を時間外労働の上限の規制の対象外にできないかという動きが始まっている。

ただでさえ施設の整備が遅れているうえに、2024年からは労働時間の上限規制が建設業界にも適用され、人手確保がますます困難になる見込みだからだ。

上限規制は働き方改革のための重要なルールだが、万博という国家的なイベントなら、例外として許されるのだろうか。これでは、「ブラック労働」どころか、「ブラック行政」ではないのか。

7月27日、日本国際博覧会協会(万博協会)が、「2024年4月から始まる建設業界への時間外労働の上限規制を万博工事に適用しないよう政府に内々で要請した」と各メディアが報道。

背景にあるのは、海外パビリオンの建設の遅れ。さらに、人手不足が懸念されている。働き方改革のための改正労働基準法に基づき、2024年4月から建設現場では、原則的には月45時間、年360時間を超える残業はできなくなる。

工事現場では、短い工期内で働く時間が制約されており、これが建設プロジェクトに支障をもたらす可能性があると指摘されている。

しかし、建設現場では、労働者が危険にさらされる事故が絶えず、近年では都市再開発などで建設投資が増加、一方で労働者の数が減少し、高齢化も進む。

結果として、現場では工期を守るために多くの残業が発生し、年間労働時間は全産業の平均よりも20%も長い状況がつづく。

賃金水準も低く、これが若年層の労働参加を妨げている悪循環に繋がっている。このような状況下では、労働者の疲労が増加し、必要な安全確保の人員が不足する恐れがある。

また、こうした問題に対して、万博協会は長時間労働を禁止する調達コードを採用しているにもかかわらず、それを軽視しようとしている。

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • プロ野球の優勝パレードまで政治利用。維新と“安倍トモ”の怪しい動き
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け