イーロン・マスクとは異なる手法。日本人が果たした「心に描いた風景の復元が可能」の衝撃

 

イーロン・マスクが、人の脳にチップを埋め込むという侵襲型の手法でのBMIの研究を進めていることを本メルマガでも何度か取り上げてきましたが、本研究は、全く別の非侵襲型の手法で人間の脳の働きを解明し外部と繋げるアプローチとしても興味深いものです。

本研究は、神経科学・深層学習に関する論文が数多く発表されている国際誌Neural Networks(2022-23のインパクトファクター9.657)にオンライン掲載されました。

いよいよ「アタマの中」を覗くことが可能になる時代の幕開けかもしれません(笑)。

詳細は以下を参照してください。

心に描いた風景を脳信号から復元!~生成系AIと数理的手法を用いた新たな技術を開発~

用語解説

*1 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)

磁気共鳴画像装置(MRI装置)を用いて被検者の脳活動状態を安全に(非侵襲的に)計測し、画像化する方法。MRI装置から発生する磁場内に横たわる被検者にラジオ波を照射し、はね返ってくる電波を計測することで、脳内の局所的な酸素消費状態や、これに関連する神経細胞の活動状態を求めることができる。

*2 ベイズ推定

統計学・確率論における推定手法の一つ。観測されたデータを元に、観測できていないデータの推定を行うもの。AI研究の基礎理論の一つ。本研究では、脳信号から読み出した(翻訳した)心の中に描かれた画像の特徴データを元に、心の中に描かれた画像を推定している。

*3 ランジュバン動力学法

化学の分野において、原子・分子の動きをシミュレーションするための計算方法の一つ。近年、AI分野にも転用され、ベイズ推定の計算結果を効率的に算出するためにも用いられている。本研究では、ベイズ推定によって、心の中に描いた画像を脳信号から復元する際、この方法で復元画像を構成している。ランダムな画像を最初に用意し、ランジュバン動力学法の更新ルールに従い、修正を繰り返すことで、十分な回数(本研究では500回)の修正後に、ベイズ推定の予測確率に合った画像を手に入れることができる。

*4 生体ナノ量子センサなどの量子計測・センシング技術

電子や光子などが持つ量子性を活用した、既存技術では実現できない高感度な計測・センシング技術。近年、その生体応用を目指した開発が精力的に進められている。QSTでは、ナノサイズのダイヤモンドに量子ビームを当てて作った結晶の乱れ(NVセンター)を用いて、細胞内の微小環境に生じる温度やpHなどの変化を精密に測定する「生体ナノ量子センサ」が開発され、脳神経活動の状態評価などに適用されている。

(「心に描いた風景を脳信号から復元!~生成系AIと数理的手法を用いた新たな技術を開発~」より)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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