現実味を帯びてきた「トランプ再選」米の同盟国・日本に問われる“大きな覚悟”

2024.02.01
 

イスラエルとアラブ諸国との「国交正常化」を進めたトランプ

20年1月、米軍はガセム・ソレイマニ・イラン革命防衛隊司令官を殺害したと発表した。イランはその報復として、イラクにある米軍駐留基地に地対地ミサイル数十発を打ち込んだ。しかし、トランプ大統領はこの攻撃によって米国の死者が出なかったことを強調し、「軍事力を使うことを望んでいない」として、イランに追加の経済制裁を科すと表明して事態を沈静化させた。

これも、アメリカ・ファーストに沿った行動だ。トランプ大統領は司令官の暗殺について、あくまで「長い間、数千人もの米国人を殺害し、重傷を負わせてきた」からであり、「米国に対する大規模なテロを計画している」という情報をつかんだからだと強調した。そして、それ以上に深追いして軍事力を使うことはなかった。このように、トランプ大統領は、米国に対する直接的なリスクとならない限り、軍事力を使うことには徹底して消極的だった。

トランプ政権は中東において、イランを経済制裁で追い詰めて孤立させる一方で、イスラエルと他のアラブ諸国との間の「国交正常化」を進めている。20年9月には、米国のホワイトハウスで、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンの2カ国が、イスラエルとの国交正常化をする合意文書に署名した。

中東のシリコンバレーとも呼ばれ、ハイテク産業の集積地であるイスラエルのテルアビブ、中東の巨大経済ハブであるUAEのドバイ、オイルマネーにあふれるアブダビ、中東の金融センターであるバーレーンを結びつける合意は、過去のしがらみにとらわれず、ビジネス・マインドを持つトランプ大統領だからできたといえる。

また、この合意の背景にも「シェール革命」がある。中東諸国は、長期的な石油・ガス価格の低迷で、産業多角化による「脱石油依存」を目指さざるを得ない。そこで、過去の恩讐を超えて、ハイテク国家・イスラエルとの国交正常化で経済的なメリットを得ることを選択した。アメリカ・ファーストとシェール革命が、中東の秩序を一変させたのだ。だが、これが、後のイスラエル・ハマス紛争勃発の伏線の1つとなった。

「アメリカ・ファースト」で米国から関心を持たれなくなった韓国

他にも、アメリカ・ファーストで米国から関心を持たれなくなった国々がある。その代表は韓国だろう。トランプ大統領は、在韓米軍について、「コスト削減になる」と将来的な撤退を示唆し続けてきた。

「在韓米軍」の撤退は、韓国が中国の影響下に入ることを意味し、北朝鮮主導の南北統一の始まりの可能性がある。北朝鮮よりも圧倒的に優位な経済力を持ち、自由民主主義が確立した先進国である韓国が、最貧国で独裁国家の北朝鮮の支配下に入ることはありえないと言うかもしれない。しかし、明らかに「左翼」で「北朝鮮寄り」の文大統領にとっては、それは何の抵抗もないどころか、大歓迎かもしれないことは、今や荒唐無稽な考えではなく、むしろ常識となった。

また、北朝鮮は、大陸間弾道弾を開発し、米国を直接攻撃できる能力を持つ可能性を持ったころから、史上初の米朝首脳会談を実現した。しかし、その後は北朝鮮が核関連施設を破壊し、米国を直接攻撃する可能性がほとんどなくなったことから、トランプ大統領は北朝鮮への関心を持たなくなった。

今、トランプ政権はほとんど朝鮮半島には関心がないようにみえる。将来的には在韓米軍の撤退により、朝鮮半島全体が中国の影響下に入ることを容認する可能性はあるように思える。

print
いま読まれてます

  • 現実味を帯びてきた「トランプ再選」米の同盟国・日本に問われる“大きな覚悟”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け