現実味を帯びてきた「トランプ再選」米の同盟国・日本に問われる“大きな覚悟”

2024.02.01
 

トランプの「アメリカ・ファースト」で国際社会はどう変化したか

それでは、トランプ大統領のアメリカ・ファーストで、国際社会がどう変化したかを振り返ってみたい。

中国の劇的な経済成長は、東西冷戦終結、改革開放政策の推進によって、米国に対する輸出を拡大することで成し遂げたられた。ところが、中国は米国でもうけたカネを使って、軍事力の拡大を進め、米国が世界の警察官から次第に撤退し、プレゼンスが低下したアフリカなどに巨額の投資をして拠点を作り、米国の地政学的優位性を揺るがせ始めた。

そして、「安かろう、悪かろう」の工業品や農産物の輸出から、ハイテク技術への転換を進めて、サイバー戦争でも優位に立ち、米国への攻撃を始めた。これは、トランプ大統領からすれば、最も許しがたい行為であることはいうまでもない。結果として、米国と中国は「新冷戦」と呼ばれるほど、関係が悪化してしまった。

次に、ロシアについて考えたい。元々、トランプ大統領は2016年の米大統領選の時から、親ロシア姿勢を見せていた。しかし、当選後には大統領の親ロシア姿勢の背景には、ロシアとの「不適切な関係」があると指摘された。

政権発足直後から、側近が次々とこの問題に関連して辞任した「ロシアゲート事件」は、トランプ政権において最も深刻な「爆弾」の一つとなった。大統領は、次第にロシアとの関係に慎重にならざるを得なくなった。17年8月、大統領は米議会が成立させた「対ロシア制裁強化法」に署名をさせられた。

トランプ大統領のロシアに対する「本音」は別としても、サイバー攻撃やSNSによる選挙干渉など、ロシアが米国内を直接攻撃してきたことは、米国にとって、絶対に容認できないことだった。ロシアは、米国内に手を突っ込んで、隙が多く、降ろしやすそうな人物を米国大統領に当選させることに成功し、うまく操ろうとして、調子に乗りすぎた。

ロシアは米国の逆鱗に触れた。米ロ関係は極めて厳しい状況にあり、まさに「史上最悪」となった。この米ロの関係悪化が、後にロシアがウクライナ侵攻を決断する際、米国などNATOの出方を読み間違えて、戦争が泥沼化する伏線の1つとなった。

トランプ政権は、「シェール革命」で得た石油・ガスを支配する力を、新しい国際秩序構築に露骨に使った。

米国は、エルサレムのイスラエル首都承認など、世界を混乱させるのが明らかな行動を、平気で取るようになった。また、イランに対して、2015年にバラク・オバマ政権下でイランと欧米6カ国が締結した核合意を完全否定し、2018年5月に離脱を宣言した。

「『シェール革命』で得た石油支配力があれば、イランをめった打ちにしてKOできるのに、どうしてオバマはこんな中途半端な合意で満足するのだ」とトランプ大統領は思ったのだろう。なぜなら、イランは原油収入が政府歳入の約45%、輸出額の約80%を占める、典型的な石油依存型の経済構造である。ゆえに、シェール革命による石油価格の長期低落がイラン経済を苦しめてきたからだ。

トランプ大統領は、イラン産原油の輸入を禁止する経済制裁を再発動させ、イランから石油を輸入し続けてきた中国、インド、日本、韓国、トルコに認めてきた適用除外も打ち切ることを決定した。イラン経済は壊滅的な打撃を受けることになった。

イランは、米国への対抗措置として「ホルムズ海峡封鎖」を示唆することがあるが、それは「石油依存経済」のイランにとって自殺行為である。米国に対抗する有効な手段はない。トランプ大統領が、戦争などという「無駄な支出」をしなくても、イランをKOできると考えたのは当然だったのだ。

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