現実味を帯びてきた「トランプ再選」米の同盟国・日本に問われる“大きな覚悟”

2024.02.01
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アメリカ大統領選に向けた共和党の予備選挙で初戦から2連勝を果たし、同党候補として指名されることが確実視されるトランプ前大統領。一部調査では支持率でバイデン大統領を上回るなど、「再選」が現実味を帯びてきました。毀誉褒貶激しいトランプ氏が再び大統領の座に返り咲いた場合、世界はどのような事態に見舞われることになるのでしょうか。政治学者で立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さんは今回、「トランプ以前のアメリカ」を振り返るとともに、彼らが世界をいかに変えたかを解説。その上で、トランプ再選となった際に国際社会に起こりうることを予測するとともに、日本を含む各国がどう動くべきかを考察しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

もしも「トランプ再選」なら日本は、世界はどうなるのか?

米大統領選を戦う共和党・候補者指名争いの予備選で、ドナルド・トランプ前大統領が連勝した。南部フロリダ州のロン・デサンティス知事が撤退し、ニッキー・ヘイリー元国連大使との一騎打ちに絞られた。

トランプ前大統領は、2020年の米大統領選での敗北を認めず、四つの刑事事件で次々に起訴された被告人である。そのような人物が、全米の世論調査で約6割の支持を得て、共和党内で独走している。ほぼ世論調査通りの結果で連勝したことで、党の指名獲得に向けて弾みとなりそうだ。

そこで、大統領に返り咲いたら、日本と世界はどうなるのか、どう行動すべきなのかを考察したい。

トランプ前大統領が変えた米国を考えるために、まず「トランプ以前の米国」がどのようなものだったかを振り返ってみたい。

トランプ以前の米国の国際戦略は、第二次世界大戦後の「東西冷戦」下で構築された。米国は、ソビエト連邦の台頭、中華人民共和国の成立による共産主義の拡大を防ぐため、西欧の西ドイツ、フランス、アジアの日本、韓国、トルコなど、地政学的な拠点にある国と同盟関係を築いた。

これら「同盟国」は、第二次大戦で荒廃し、自ら国を守る軍事力を失っていた。工場が破壊されて、経済活動が停滞し、失業者があふれ、共産主義が蔓延する懸念もあった。米国は、「同盟国」に「ソ連の侵略から守る」と約束し、米軍を展開した。また、「同盟国」の経済復興のために、巨額の経済的援助を行った。

東西冷戦期に、米国は「世界の警察官」となった。世界各地に米軍を展開し、同盟国の領土をソ連の軍事的脅威から防衛するために、同盟国の安全保障をほぼ肩代わりした。その上、同盟国で無制限に軍事作戦を展開する自由を得た。「朝鮮戦争」や「ベトナム戦争」など同盟国の領土内で、米軍が共産主義と直接戦ったのだ。

米国は、同盟国が安全に石油・ガスなど天然資源を確保できるようにするため、海軍を世界的に展開して「世界の全ての海上交通路」を防衛した。同盟国は、自国の沿岸線をパトロールする小規模な海軍を維持するだけでよくなった。

また、米国は「世界の市場」となり、同盟国に「市場への自由なアクセス」を許した。同盟国に工業化と経済成長を促した。同盟国の輸出品を制限なく受け入れることで、同盟国を豊かにした。国内に貧困や格差による不満が爆発し、共産主義が蔓延してしまうことを防ぐことが目的だった。

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