いよいよ11月5日に迫ったアメリカ合衆国大統領選挙。現職のバイデン氏とトランプ前大統領の再戦が確実と見られ、僅差ながらトランプ氏優勢との世論調査の結果も伝えられています。米国民がトランプ氏を選択した場合、日本はどのような影響を受けることになるのでしょうか。安全保障や危機管理に詳しいアッズーリさんは今回、我が国の首相がトランプ氏の「個人的な信頼」を得ることの重要性を解説するとともに、それが叶わなかった際に米国側が日本に取りうる対応を考察。さらに第2次トランプ政権が日本に与える「間接的な影響」について解説しています。
米大統領選は今年の「Xデー」。選挙結果は日本にどのような影響を与えるのか?
今年のエックスデーを挙げるとすれば、11月5日だろう。11月5日、米国では大統領選挙が行われるが、既に争う2名による戦いは始まっている。1月15日、オハイオ州では共和党候補者選びの予備選が行われ、トランプが圧倒的勝利を収めた。続くニューハンプシャー戦でもトランプが圧勝し、最大のライバルになると言われてきたフロリダ州知事のデサンティスは選挙戦から撤退し、トランプ支持に回る決意を示した。残るはヘイリー元国連大使だが、既にいつまで選挙を続けるかという状況だ。
そして、バイデンVSトランプの再戦となるわけだが、米国内ではバイデンの4年間に対する肯定的な評価は少なく、支持率も3割程度しかない。ウクライナ支援に対する国民の不満も強まり、何より高齢という部分が選挙戦を大きく不利にしている。そして、米国民の多くは米国が外国の紛争に深く介入することを望んでおらず、国内経済や移民対策、テロ対策など“米国を守る”行動を優先する指導者の誕生を待っている。これが今日の米国であり、それに照らせばトランプの方が圧倒的に有利な環境にあろう。実際、両者の比較ではトランプ有利の報道が多い。
国益を優先し戦略的に動いた安倍晋三氏
では、仮に第2次トランプ政権となれば、日本にはどのような影響が考えられようか。
これについて我々がまず注意しなければならないのは、“第1次トランプ政権の時に日米関係が良好だったので今回も問題ないだろう”と勝手に認識することだ。
2016年の米大統領選挙でトランプがヒラリー・クリントンに勝利した時、日本では過激な発言を繰り返すトランプとどう付き合っていくかと日米関係の行方を不安視する声が広がっていった。だが、日本の国益を冷静に考え、対トランプで戦略的に動いたのが安倍元総理だった。
トランプ氏が勝利した後、世界の指導者でトランプに真っ先に会いに行ったのが安倍晋三で、就任前にニューヨークにあるトランプタワーを訪れ、そこでトランプの趣味であるゴルフクラブ手土産に渡し、良好な日米関係を維持、構築すべく人的交流を図った。
その後、安倍とトランプは日米会談を行うごとに共通の趣味であるゴルフで個人的な信頼関係を深め、トランプは安倍への信頼を持つようになり、安倍は日本国内に漂っていたトランプ不安論を払拭することに成功した。