【報道しないの?】フトコロ具合と正反対。NHK景気体温計のウソ?ホント?

2015.02.06
by グッピー松田
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NHKの「景気体温計」は故障中?

「は?おれは不景気なんだが?」

「うー、まぁこんなもんかなぁ」

「個人的には、ちょっと無理矢理感が……」

昨年から公開されているNHKの特設サイト「さわってわかる日銀地域経済報告」を最近になって見た、筆者を含むマネーのまぐまぐ編集部内のつぶやきである。

このサイトの出典は、年に4回発表される「日銀地域経済報告」(通称:さくらレポート)。「景気体温計」の役割を果たすという矢印マークを日本地図上にプロットし、各地域の景気の変化を視覚的に把握できるインフォグラフィックとなっている。NHKニュースのトップページからリンクするなど、イチ押し企画のようだ。

それによると、日銀が異次元の金融緩和を決定した2013年4月以降、国内の景気は堅調に推移。

2014年10月の東北地方や、2015年1月の北海道といった一部の例外をのぞき、日本地図上に景気判断の引き下げをしめす下向きの矢印はあらわれず、2015年1月時点でも、北海道以外のすべての地域で景気は「基調的には緩やかに回復」しているとされる。

だが、アベノミクスで株価こそ上昇したものの、消費税は上がるわ、賃金の上昇スピードは遅いわで、個人の生活は決してラクではない。日銀の調査内容にケチをつけるわけではないが、公共放送たるNHKが広く告知する「景気体温計」が横ばいのままだなんて、何だかヘンな話ではないだろうか。

この地図の日本って、いったいどこの日本?NHKは別の世界線にでも飛んでしまったのか?そうではない。これには簡単なカラクリがあった。

日銀発表の別指数では、個人景況感が冷え込んでいた!

そもそも「日銀地域経済報告」は、日銀本支店による企業ヒアリングをもとに、地域経済に関する各種データを活用しながら取りまとめたもの。公共投資、設備投資、個人消費、住宅投資、鉱工業生産、雇用・所得動向などから、景気情勢を総合的に判断する。

日銀の金融政策を左右する材料のひとつとして、市場関係者も注目する重要な調査だが、足元の家計は必ずしも反映されない。NHKがいくら見せ方を工夫して「これが今の景気体温計です」としたところで、肝心の中身が個人の景況感と乖離する場合があるのはしかたない。

そんな事情もあってか(?)、日銀ではこれとは別に、年に4回「生活意識に関するアンケート調査」を実施し、個人の景況感を示す判断指数(DI)を発表している。

これは、統計調査等だけでは把握しにくい生活者の意識を聞き取るための世論調査のようなものだ。全国の成人4000名を対象に郵送アンケート方式で調査され、景気が1年前より「良くなった」との回答から「悪くなった」との回答を引いた割合で指数を算出する。

それによると、今年1月に発表された2014年12月分の個人景況判断指数(DI)はマイナス32.9で、前回調査(2014年9月)より12.5ポイントの大幅低下。指数の悪化は9ヶ月連続で、下落基調にある。

マイナス32.9という数字は2012年12月調査(マイナス50.6)以来の低水準で、1年後の景況感についても先行き「悪くなる」との回答が増加している。何のことはない、同じ日銀が発表する別の指数では、個人の景況感はしっかり冷え込んでいた。ただ、NHKがこのニュースを大々的に取り上げていないだけなのだ。

NHKは「報道しない自由」を行使中?

NHKが、本当の意味で国家の統制から自立した「みなさまのNHK」なら、「さわってわかる個人の景況判断指数」なんて特設サイトを作ってくれてもよさそうなものだ。

そうすれば、現在のサイトとはまったく違ったインフォグラフィックができあがるはずだし、なにより受信料を納めている「個人」の景況感によりマッチした内容になるだろう。

少なくとも、「このページは受信料で制作しています」という注意書きにイライラしたり、「え!?景気が悪いのっておれだけ!?」なんて深夜にションボリせずに済む。

3500億円の新社屋建設の合間にでも、ぜひよろしくお願いします、NHKさん。

 

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