不十分なコロナ対策。新宿の「限界集落」団地、戸山ハイツの惨状

2020.07.29
eyecatch
 

都心の一等地に位置しながら、その立地ゆえにコロナ禍に悩まされている大規模団地をご存知でしょうか。今回、フリー・エディター&ライターでジャーナリストの長浜淳之介さんがフォーカスするのは、5,000人もの人々が住む新宿の都営団地、戸山ハイツ。長浜さんは今回、65歳以上の高齢化率が6割にもなるマンモス団地が抱える問題とコミュニティ再生の動きを、丹念にレポートしています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

新型コロナ禍に見舞われたことで、かなりの惨状を呈しつつある新宿のマンモス団地・戸山ハイツの現在

緊急事態が解除されて、日常の風景が戻りつつあるが、東洋一の歓楽街・歌舞伎町では、ホストクラブ、キャバクラのような「夜の飲食店」から毎日のように新型コロナウイルス感染者が報告されている。池袋、大宮などといった近隣の街、さらには大都市を中心に、全国的に再び感染者が広がっている。

東京都の感染者は7月に入って増加を続け、1日に200人超えの日も珍しくなく、23日には300人を突破した。第二波が到来したと考えられ、再度の緊急事態発令も起こり得る状況になってきた。

その歌舞伎町にほど近い、山手線内随一の大規模団地が、新宿区戸山2丁目にある「戸山ハイツ」である。

戸山ハイツは都心部にあるにもかかわらず、緑が多い恵まれた住環境が魅力

戸山ハイツは都心部にあるにもかかわらず、緑が多い恵まれた住環境が魅力

戸山ハイツは人口5,000人ほどを有する都営の中高層賃貸アパート群(27号棟のみ分譲、1・2号棟は公務員住宅)だが、65歳以上の高齢化率が新宿区内でも際立って高く、実に6割に上る。

唯一の分譲、27号棟

唯一の分譲、27号棟

新宿区全体での高齢化率が2割ほどなのに対して、戸山ハイツでは、20年後の少子高齢化がより進んだ日本社会を、先取りしたような人口構成となっているのだ。

高齢化率が高い戸山ハイツだが、子育て世代もいないわけではない

高齢化率が高い戸山ハイツだが、子育て世代もいないわけではない

新型コロナは高齢者になるほど重症化率、死亡率が高くなる疫病であり、50代までの罹患者死亡率が1%以下なのに対して、80代以上は10%を超えているとされる。歩いても行ける歌舞伎町での感染爆発に、戸山ハイツの住民の不安の大きさは推して知るべしだ。

戸山ハイツに住んで40年以上になり、自治会長を務めたこともある村山恭太氏は、「戸山ハイツには、歌舞伎町に勤める人も多く住んでいる。もしもコロナ患者が発生してクラスターになれば、独居老人が増えている状況から、一大事になりかねない」と、危機感を募らせている。

村山恭太氏が持ち歩く、コロナ対策グッズ

村山恭太氏が持ち歩く、コロナ対策グッズ

東京のど真ん中で取り残されたように限界集落化しつつある、戸山ハイツの危機、その背景にあるコミュニティの崩壊と再生の動きを調べた。

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