「西側諸国の結束」は幻想。ウクライナへの“過剰援助”で孤立する米国

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ロシア軍からの激しい攻撃を受け止め続け、各国に軍事支援を求めるウクライナのゼレンスキー大統領。しかしその対応を巡っては、西側サイドでもアメリカと西欧諸国との間に温度差が存在しているようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、「西側の結束」が幻想でしかないという事実を、さまざまな要素を総合し証明。さらに国際社会の中で孤立を深める一方とも言えるバイデン大統領を、「哲学の貧困」という強い表現を用いて批判しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年6月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

ますますウクライナ戦争にのめり込むバイデン政権/援助の3分の2は米国が占める

いまバイデン米大統領が切望しているのは、「民主主義vs専制主義」の世界史的な戦いの関ヶ原と位置付けられるべきウクライナ戦争の先頭に立って雄々しくプーチンに立ち向かう「西側民主陣営の盟主」として賞賛を浴びることである。バイデンは6月2日付「ニューヨーク・タイムズ」への寄稿「米国はいかにウクライナを支援すべきか」で、「自由世界とその他の国々は、米国に導かれてウクライナ側に結束し、かつてない規模の軍事、人道、金融支援を提供している」と誇らしげに述べている。

しかし、そのようなイメージに酔いたがっているのはバイデンとその取り巻き以外には属国=日本の腰抜けメディアくらいなもので、世界の現実は必ずしもそうなっていない。

「西側の結束」という幻想

5月25日にスイスのダボスで開かれた「世界経済フォーラム」総会にリモート出席したウクライナのゼレンスキー大統領は「西側諸国の団結が必要で、それによって初めて我々はロシアに対する優位を誇れる。団結とは武器〔支援〕に関することだ」と、欧州各国の軍事援助が米国と比べて余りにも少ないことに不平を鳴らした。

ダボスで目立ったのは、米国と西欧の温度差だけではない。元チリの財務相で大統領候補にもなったエコノミストのアンドレス・ベラスコは「ニューズウィーク」6月14日号へのコメントで、「西側同盟、西側の価値観……など西側が付く言葉は全て、マーケティング戦略的には終わっている。それが決定的になったのはダボス会議だった」と述べている。「西側指導者はインド、インドネシア、トルコ、南アフリカ、パキスタン、サウジアラビアに『西側同盟』に入って対ロ制裁を強化するよう懇願したが、これらの国々の代表は唖然とし、後でさんざん陰口も叩いていた。……ダボスで鼻についたのは『西側はロシアを締め上げているのに、南の国々は何もしない』という論調。こういう言い方をするから、西側諸国はこの会議でほとんど何の成果も上げられなかったのだ」と。

本来であればそこにバイデンが臨席してゼレンスキーを称賛し、インドや南アなどBRICSや、インドネシアを筆頭とするASEANや、サウジなど中東の大国も、こぞって「西側」の旗の下に結束するよう促さなければならなかったはずだが、彼に代わってウクライナ戦争に関するビデオ・メッセージを送って「クリミア半島をロシアに渡すことを前提とした和平」を呼びかけて非戦派諸国の共感を集めたのは、何と99歳になったキッシンジャー元国務長官だった。

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