【書評】地獄のシナリオ。日本の賃金は中国に近づき、産業はギリシャ化する

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かつて世界の工場と呼ばれた日本も、近年では円安の影響で好調の観光産業にすがりつく始末…。日本とアメリカはなぜここまで差がついてしまったのか。今回の『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』では、元官僚で経済学者の野口悠紀雄さんが日本経済低迷の理由について鋭く斬り込んだ著書を紹介しています。

 

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「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる』 野口悠紀雄・著 ダイヤモンド社

 

こんにちは、土井英司です。

サンフランシスコ、ニューヨークと旅をして、絶好調アメリカ経済日本を比較すると、どうしてこうも差がついてしまったのだろうと疑問に思います。

一方で、遅々として進まない日本の経済対策。打ち手のほとんどは空振りに終わり、唯一円安の影響で好調な観光産業を見ていると、日本もやがてギリシャ化するのか、と先行きを案じてしまいます。

本日ご紹介する一冊は、そんな日本経済低迷の理由を、日米中の比較から明らかにし、成長の鍵を握る「高度サービス産業」を日本がどう促進すべきか、論客が説いた一冊。

著者は、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんです。

本書のなかで著者は、いまアメリカで起こっている経済の新潮流を紹介しつつ、なぜアメリカと日本にここまで大きな差がついたのか、なぜ日本の賃金が急速に中国に近づいているのか、構造的な視点から分析を試みています。

興味深かったのは、「日本の産業構造が中国と同じなら、賃金はいずれ中国並みに低下する」「逆に言えば、アメリカと同じ産業構造を持てば、日本と中国の間で要素価格均等化は起きず、日本とアメリカの間で起こることになる」という意見。

そして、「ファブレス」と「サービスにおける国際間取引」をキーワードに、なぜアメリカドル高でも成長できるのか、その秘密を明らかにしています。

本書を読めば、高度サービス産業における起業を促進するための規制緩和と、円高でも儲かる産業構造の改革が急務であることが、明確にわかると思います。

そして、優秀な人材がいつまでも大企業製造業)にしがみついていることが日本経済低迷理由であり、アメリカで伸びている「専門的、科学技術的サービス」を促進しようとすれば、自ずと自営業者増えるようになる、というのが統計から明らかになるでしょう。

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