逆選択とは?
例えば、保険業界は顧客の詳細な情報を得ることが困難なため、リスクの高い加入者ばかりが集まってしまう、といったことです。
「情報の格差」とは、保険業界でいえば、保険会社は顧客の正確な情報を得ることが困難であることをいいます。例えば、顧客が病気を隠して保険に入ろうとしても、保険会社は「あなたは病気を隠していますよね?」とは聞けません。
顧客は自身の情報を隠し、保険会社は顧客の詳細な情報を得ることができない状態が「情報の格差」になります。よって、病気がちな人と健康な人を同一に扱わざるを得なくなってしまうことになります。
その場合、仮に保険料が一定とすると、健康であるリスクの低い人は保険料が割高になり、保険に入るメリットが少なくなります。逆に、病気がちでリスクの高い人は保険料が割安になり、保険に入るメリットが多くなります。逆選択が働くことでリスクの高い人ばかりが保険に加入してしまうのです。
リスクが高い人ばかりが集まってしまうことで、保険加入者はすぐに病気になったり事故を起こしたりしてしまいます。保険の支払い額が徴収する保険料よりも上回ることで業績は悪化します。
マクドナルドは、低価格や効率重視の経営により、あらゆる顧客に訴求し集客を図っていきました。顧客の詳細な情報など関係なく、ターゲットを広げて訴求していきました。それで集客は実現できたのですが、逆選択が働き、質の低い顧客が集まるようになってしまったのです。次のような循環が発生しました。
- 消費者情報を無視した無差別的な訴求・対応
↓ - 質の低い顧客を集客
↓ - 質は低いが集客はできているので業績は一時的に向上
↓ - 引き続き無差別的な訴求・対応
↓ - 顧客の質のさらなる低下
↓ - 質の高い顧客の離反
↓ - 業績が悪化
↓ - 業績悪化を食い止めるため、消費者情報を無視した無差別的な訴求・対応で集客を図る
↓ - 質の低い顧客を集客
以降、同様の循環が繰り返されます。マクドナルドはこの悪循環に陥ってしまったのです。
短期的に見れば、まずはあらゆる手段で集客を図ることは必要です。ただ、長期的に見ると、どこかで先の悪循環に陥ってしまいます。その悪循環を断ち切るタイミングが遅すぎたのです。
「質の悪い顧客が集まる店」というレッテルが貼られてしまうと、そのレッテルを剥がすことは至難の技です。失った信頼やイメージは簡単には取り戻せません。もっと早く対策を講じるべきだったのです。