なぜ『きけわだつみのこえ』を読んだ特攻遺族は異議を唱えたのか

 

当時、「歴史的記録を世に発表したい」との呼びかけに応えて遺族から寄せられた遺稿は309人分にのぼったといいます。その中から取捨選択され75人分が一本にまとめられて刊行されることになったのですが、そこには意図的な区分けが施されていたというわけです。

ですから、本書が刊行されるや、特攻隊員として散華した子を持つ遺族の一人が、このような編集に対して厳しく異議を唱えたのです。

真にわだつみのこえと題するならば全部の遺墨(いぼく)の中からそれぞれ異なれる性格思想或(ある)いは戦争観或いは死生観を網羅(もうら)して編集してこそ『きけわだつみのこえ』でなければならないのである。

斯(かか)る事は……幾百万の戦死者の霊と其の遺族に対する侮辱にして剰(あまつさ)え社会の良識を誤らしむる残酷行為と言わざるを得ない。

公正さに欠けているというわけですね。

image by: Wikimedia Commons

致知出版社この著者の記事一覧

京セラ・稲盛和夫氏、サッカー日本代表・岡田武史氏など、人間力を高める月刊誌『致知(ちち)』に登場した各界一流人の名言や仕事術など、あなたの「人間力アップ」に役立つ情報を配信中。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 致知出版社の「人間力メルマガ」 』

【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

print
いま読まれてます

  • なぜ『きけわだつみのこえ』を読んだ特攻遺族は異議を唱えたのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け