イギリスは、まだ実害がなく中国による迷惑を被っていないから、呑気に構えていられるのですが、しかし、習近平がイギリスに接近することで、軍部によるイギリスへのサイバー攻撃が今後激増する可能性もあります。
もともと、キャメロン首相やチャールズ皇太子は、ダライ・ラマ14世と会談するなど、チベット擁護派でしたが、リーマンショック以来経済的に困窮したイギリスは、2013年に訪中しチベットを捨て中国に寝返ることでイギリス経済を救ったのです。
大戦末期のカイロ会議から、英米における対中政策は異なっていました。簡単にいえば、アメリカの政策は巨視的で、イギリスは目前の利害関係にこだわるミクロ的な政策を好んだのです。イギリスとEUとの関係も英米に似ています。英中関係は、利害関係の変化によって流動的で、今後さらに現実的に変わっていくと予想されます。
しかし、英中の蜜月も、いつまで続くかわかりません。二枚腰外交はイギリスの得意技ですし、中国経済の衰退も明らかです。昨日中国は第3四半期のGDPを発表しましたが、前年比6.9%増という数字でした。7%割れしたことが大きく報じられましたが、7月から8月にかけて、あれほどの株暴落があり、チャイナショックが騒がれていたことからしてみても、高すぎです。粉飾していることは間違いありません。
経済成長が鈍化すると、中国人によるサイバー攻撃はいっそう激しくなります。「保八」がダメなら「保七」でも「保六」でも、少しでも経済成長を維持したいからです。
先進国の技術を盗み、稚拙に模倣し、オリジナリティが一切ないまま成長してきたのですから、すぐに限界が来るのは当然です。そこで、さらに模倣するものを得ようとサイバー攻撃をしかけ、企業秘密を盗み、情報を窃取する、というのが経済面から見た中国のサイバー攻撃やハッキングの目的です。
しかし、習近平が外交を展開するなかで、反習近平派がそのようなサイバー攻撃を公然としかけるのですから、習近平もなかなか頭がいたいところだと思います。「国のため、経済のため」だと言われたら、習近平もサイバー攻撃やハッキングを止めさせるわけにはいかないでしょう。「愛国行為」を責めるわけにもいきませんし、実際に経済成長が共産党政権が生き残る唯一の道だからです。
サイバー攻撃をやめろというアメリカの要求に対して、中国もそれなりの言い分があります。そうしなければ中国には生き残る道が残されておらず、13億人の生存権を確保することができないのです。少なくとも、習近平の「中華民国の偉大なる復興の夢」が消滅してしまえば、習近平自身も終わりです。
だから、習近平もサイバー攻撃やハッキングを半ば公認せざるをえないのでしょう。ある意味で、中国のサイバー攻撃に最も頭を悩ませ、ジレンマを抱えているのは、習近平なのかもしれません。
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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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