南シナ海作戦はほんの序章。アメリカは2つの「戦争」を中国にしかける

 

「AIIB事件」がなかったら?

さて、Sさまからの質問に戻ります。

もし件のAIIB事件が起こらなかったら、南シナ海の行方というか…。

 

中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になってしまったのでしょうか?

 

AIIB事件が起らなかった時、米国はどうするつもりだったのでしょうか?

ここまで2013~15年の動きを見てきましたが、「AIIB事件」が起こるまで、アメリカは「南シナ海」の状況にあまり関心をもっていませんでした。ということは、「AIIB事件」がなければ、2013~14年の状況がしばらくつづいていたことでしょう。つまり、アメリカは、プーチン、イスラム国との戦いをつづけていた。

しかし、アメリカが、巨大化する中国の脅威に、永遠に気づかないということもあり得ないでしょう。「AIIB事件」ではない他の事件で、「ええ!? 中国ヤバいじゃん!」と気づいたはずです。その時、やはり「南シナ海埋め立て」は、問題になっていたはずです。

要するに、「はやいか、遅いかの違い」ということですね。日本にとっては、「AIIB事件で、アメリカがはやめに気づいてくれてよかった!」ということなのですが。

アメリカは、「表面上」何も変えることができないが…

もう一度、Sさまの質問を。

もし件のAIIB事件が起こらなかったら、南シナ海の行方というか…。

 

中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になってしまったのでしょうか?

 

AIIB事件が起らなかった時、米国はどうするつもりだったのでしょうか?

この、「中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になってしまったのでしょうか?」ですが。米海軍が動いたにも関わらず、中国は「人工島建設」をやめないと思います。

ウォールストリートジャーナル10月28日に、「南シナ海の米中緊迫、5つのポイント」という記事がありました。その5番目のポイントは、以下のようになっています。

5.この作戦で実際に何かが変わるのか

 

ほとんど変わらない。

 

中国が造成した7つの小島が存在しなくなるわけではなく、この海域で中国がますます民間・軍事的存在感を示すのは避けられないようだ。

 

米国は重要な原則とみえるものを示したが、このささやかな抗議行為では、中国が南シナ海における基地ネットワークの構築・維持という目的を最終的にあきらめることはないだろう。

まさに、その通りでしょう。そして、アメリカも、「今回の威嚇で『人工島建設』を断念させよう」とは思っていないはずです。

しかし、私たちは、「米中覇権争奪戦」が「はじまったこと」をはっきり自覚しておく必要があります。そして、「核兵器大国」同士の争いにおいて、「軍隊同士の戦闘」は「戦争のほんの一部」でしかないのです。2014年の「米ロ対立」を見ればわかります。

  • 情報戦=プーチンを悪魔化する

「プーチンはヒトラーの再来だ!」
「プーチンは世界の孤児だ!」

など、脳みそに残る言葉を100万回繰り返し、信じさせる。

  • 経済戦=日欧米による経済制裁

そして、実際の戦闘は、「代理戦争」でした。つまりアメリカの利益を代表するウクライナ軍と、ロシアの利益を代表するウクライナ東部「親ロシア派」の戦い。米中の争いも、両国軍が大戦争をするような事態は、最終段階まで起こらないでしょう(孫子もいってますが、「戦わずに勝つ」のが一番いいのです)。

アメリカは、別の手段をメインに中国をつぶしていくはずです。

具体的には、

  • 情報戦=中国を悪魔化する
  • 経済戦=中国経済を崩壊させる

です。

結局アメリカは、「中国の一党独裁体制を崩壊させ、民主化させること」を目指すことでしょう。

「AIIB事件」まで、アメリカの支配層は、「中国はアメリカの作った世界秩序の中にとどまる」と信じていました。しかし、「AIIB」は、明らかに「アメリカの世界秩序の『外』に新たな国際金融機関をつくること」ですから、「裏切り」に激怒しているのです。

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