テロの温床か? 悩める欧州に「シェンゲン条約」という課題

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パリ多発テロの実行犯が、難民を装いフランスへ入国していたことが判明しました。無料メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』では英国在住の日本人が、こうした事態を防止するためには「必要悪による治安維持も念頭に置くべきだった」と記しています。

街角の風景 非日常的な出来事

13日夜にパリで無差別同時テロが発生し、懸念されていたことが現実となり、多くの方々が犠牲となったことに対し心からお悔やみ申し上げます。

さまざまな情報が飛び交い、痛ましい惨事もこれまで起きてきました。これまで気になっていたものの真偽のほどを見極めるのも困難な状況で、これまで取り上げる機会をうかがっていました。あくまでも私見であることをお断りした上で、今回の同時テロをきっかけに少し触れることにしました。

アラブの春後の状況混乱を利用してイスラム系テロ組織「イスラム国IS)」が勢力を拡大したことに伴い、中東情勢は悪化の一途をたどっていました。大学で国際関係論や政治学をちょっとかじり、中東についても状況を見守っていた身としては西側の及び腰な対応を常に懸念していました。

政治学のいろはでもありますが、まっとうな戦略的視野のある政治家であれば、ある政権を打倒する前に後釜を用意して秩序だった権力の移行を図るはずなのですが、ここ数年こうした動きは見られず、どちらかと言えば指をくわえて事態が沈静化するのを待っていただけのように思われます。

発端となる難民問題も今年始まったことではなく、北アフリカからイタリアやマルタへと向かう難民はこれまでもいました。トルコ経由で大量に押し寄せるようになるまで欧州諸国は傍観。難民に交じってテロリストが欧州に侵入するリスクが叫ばれていましたが、怒涛のごとく押し寄せる難民への対応で安全保障面の配慮が二の次になってしまう状況に至りました。

アラブの春はいわゆるパンドラの箱で中東社会における矛盾が一挙に破裂した状況だとみています。理想を掲げて独裁者打倒に動いた向きもありますが、理想だけで世の中を動かすことはできません。賛否両論あるでしょうが、必要悪による治安維持も念頭に置くべきであったのではないかと常々考えたりしています。

近代社会において人権が重要事項であることは疑う余地がありません。ただ、このような未曽有の状況でこうした概念を一概に適用する難しさも浮き彫りになりました。パリ同時テロの犯人の1人はトルコからギリシャ経由で入った難民の一団に紛れ込んでいたとも言われています。

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