安倍政権は倒れるのか。共産党の英断で自公過半数割れの悪夢

 

野党と市民の統一候補である

32の1人区で、野党はどのくらい勝てる可能性があるのか

第1に、基礎的な分析として、前回、前々回の各党の得票数をベースにして選挙区割りの変化その他の条件を勘案して補正するシミュレーションの方法がある。東京新聞が行った試算では、13年参院選のデータを元にした場合、共産を含む非自民勢力が一本化すると、岩手、宮城、山形、栃木、新潟、山梨、長野、三重、沖縄の9区で勝利し、また10年参院選のデータを元にすると、以上に加えて、青森、福島、岐阜、三重、滋賀、奈良、岡山、徳島・高知、大分、熊本が加わって計19区で野党が勝利する。

第2に、これが単にそのような足し算では計りきれないのは、長年唯我独尊を貫いてきた共産党が初めて他の野党と全面的な協力を行う選挙だということである。民主党の右派が心配するように、確かに共産党アレルギーは根強いものがあって、健全なる保守層が逃げていくというデメリットはあるだろうが、その保守層の大半は安倍右翼暴走路線を憂えていて、「これで流れが変わるのなら野党統一候補に入れようか」と考えるかもしれないし、また無党派層には前々から「他の野党はだらしないから、仕方ない、主張がはっきりしている共産党に入れるか」という人が少なからずいたので、むしろ安心して統一候補に入れるのではないか。

またこれは、単に共産党が「落選覚悟で候補者を立てるのはもう止めた」という消極的協力ではなくて、政策協定を結んで候補者を推薦し、陣営に加わって選挙活動の一端を担おうとする積極的協力なので、共産党持ち前の組織力が発揮される可能性がある。もちろんこれは、双方にとって「初体験」なので、やってみなければ分からないが、選挙活動をとりまとめる参謀長の手腕次第では大いなるメリットとなるのではないか。

第3に、最も重要なのは、これが野党同士の政党間駆け引きだけから生まれた共闘ではなく、安保闘争を闘った市民運動の人々が法案通過後も引き続きそのエネルギーを維持し、地元の野党に圧力をかけて統一候補の樹立を促したばかりでなく、各党と並ぶ当事者として政策協定に加わるなど、市民団体が自らの問題として選挙に取り組み始めていることである。

もちろんこれまでも、特に地元の身近な問題に取り組む環境団体や反原発運動の人たちが、町長をリコールして自分たちの主張に沿った候補者を押し立てて選挙を戦うといった例はいくらでもあるが、国政選挙において、しかも全国同時多発で、自分らが当事者となって主体的に選挙を戦うといった事態は、たぶん歴史上初めてだろう。過大評価は戒めなければならないけれども、これは、従来の「選挙予測」の手法では捉えられない大きなうねりを呼び起こす可能性を秘めているように思う。

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