理研の特別研究員が教えます!遺伝子診断にだまされない方法

Syda Productions/shutterstock
 

遺伝子診断の活用法

上記のように環境要因も大きいため、遺伝子診断は必ずしも当たりません。ですから、将来癌になると診断されても実際になるとも限りません。

では、遺伝子診断は必要ないのかと言われたらそうではありません。なぜなら、遺伝子診断の結果から将来なる確率の高い病気がある程度わかるからです。もし、胃がんになりやすいなら、胃の検査を定期的に行えば、胃がんを回避できます。このように遺伝子診断により効率的なヘルスケアが可能となるのです。

遺伝子診断の注意点

遺伝子診断の注意点としては、業者の診断がどの程度の信頼性があるのかにあります。もしかしたら、遺伝子を調べることもしないで、コンピュータでランダムに結果を出力するようなことをしているかもしれません(これではテレビの占いと同じ)。

たぶん、適当に結果を出力しても、簡単にはばれないと考える会社もあるでしょう。実際に診断を行っている姿を見ることができればいいのですが、そんなことをいちいち調べる人はいないでしょう。

では、どうやって上記の点を回避するかというと、「複数の会社に遺伝子診断を依頼する」ということをします。遺伝子診断なので、多少違いがあるにせよ似たような結果になるはずです。ある会社では胃がんになる確率が高いのに、他の会社では低いとなれば何かがおかしいということになります。

この方法を使えば、どの会社がいい加減な診断をしているかを調べることが可能になります。

遺伝子診断の今後

今後、遺伝子を読む技術が進み安価になれば、個人が自分の全DNA情報をもつようになるでしょう。生まれてきたら、DNAを読むのが当たり前になる時代の到来です。全DNA情報をもっていると、安価に遺伝子診断をすることができます。DNAは一度計測すれば変わらないので、最新の研究結果が遺伝子診断に反映されます。

個人が全DNA情報を持つと、薬の副作用をある程度おさえることもできます。例えば、癌の抗癌剤をいろいろ試すことなく、遺伝子情報から副作用の少ないものを選択することが可能となるでしょう。

また、研究においてもおおきな恩恵が受けられます。遺伝情報と病気のデータが大量にあれば、病気に関する情報がDNAのどこに書かれているかがわかります。そのDNAの個所に関わるタンパク質を調べていけば、病気のメカニズムの解明にもつながるというわけです。

最後に

DNAは安定な物質で、今後もDNAを中心とした研究は急速に進むでしょう。

しかし、注意が必要なのはDNAと病気の相関をしらべても、病気の仕組みはわからないということです。例えば、癌化に関する遺伝子がわかるかもしれませんが、なぜ細胞が異常増殖するのかの分子メカニズムはわかりません。

もちろん、分子メカニズムはわからなくても、実用上問題ないのかもしれません。しかし、私たちの体がどのような仕組みで動いているのかを、みなさんは知りたいとは思いませんか?

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