DNAと病気の関係をさぐる
このA,T,C,Gの組み合わせで遺伝情報が保持されているという発見はインパクトがあります。というのも、遺伝情報さえわかれば、生き物の未来を予言できる可能性があるからです。
そのような期待もあり、ヒトの遺伝子をすべて読むという試みが2000年辺りから始まり、今ではヒトや主要な生物種の遺伝情報はすでにわかっています。
遺伝情報がわかれば、次に病気との関係を知りたくなります。例えば、癌細胞の場合、DNAのどこに変異が入っているかを調べれば、癌に関係する遺伝子がわかりそうです。変異が入っている個所がわかれば、その変異を狙い撃ちした薬をつくることが可能になります。
また、長寿の人のDNAを片っ端から調べれば、長生きに重要な遺伝子が見つかるかもしれません。
上記のように、DNAとヒトの表現型(病気、身長、髪の色などの身体的特徴)の情報が大量に手に入れば、両者の関係性が明らかになるのです。
DNAと表現型の関係性がわかれば、DNA情報を読めば将来どのような病気になるかがわかるでしょうというのが遺伝子診断のアイデアです。近年、DNAチップや次世代シーケンサーなどのテクノロジーによりDNAを安価に読めるようになってきたこともあり、遺伝子診査は普及し始めました。実際に、DeNAやYahoo!などの大手企業が遺伝子診断サービスをはじめています。
これらのサービスでは、個人において多様性のあるDNA塩基情報を読み込み病気の確率を計算します。この個人差のある塩基のことをSNP(Single Nucleotide Polymorphism)と呼びます。遺伝子検査では、表現型に対応する個体差の高いSNPを多数読み、未来を予測するわけです。遺伝子全部を読むわけでないので、DNAチップにより比較的簡単に診断することが可能です。実際にYahoo! のGeneLife ZEROは29800円で行われています。
DNAから表現型を予測するのは難しい
DNA診断の際に注意しないといけないのは、DNAが必ずしも未来を決定しないということです。
コンピュータは一度プログラムしたものを正しく実行します。一方、おもしろいことに生物の場合、同じDNAでも異なる動作をとります。
例えば、遺伝情報の同じ一卵双生児の場合でも、寿命も異なれば顔や性格も異なります。
生物の場合、食べ物や生活環境が異なれば、遺伝情報が同じでも、病気になる確率や性格などもかなり変わってくるのです。そのため、DNAを読んだからといって、将来なりうる病気を100%の確度で予測することは不可能なのです。