なぜスイスは「世界の銀行」になり、日本は富裕層に避けられるのか?

 

ウィリアム・テルって知ってますよね。私が初めて買ったクラシックのレコードは、ウィーンフィルのウィリアム・テル序曲でした。私くらいの年代の日本人なら、ロッシーニのこの名曲、サビの部分は必ず口ずさめます。私たちが子供の頃、アメリカのテレビドラマ「ローン・レンジャー」が大人気で、このテーマソングがウィリアム・テル序曲だったんです。

このウィリアム・テルは日本でいうと鎌倉時代の人物で、スイス独立の英雄です。この頃既にスイスには弓(クロスボー=石弓)の名手が沢山いて、その後もヨーロッパ各地の紛争に際して傭兵として働きに行っていたんです。傭兵が稼いだ金をふるさとスイスに送金して家族に届けるために、スイスには銀行が沢山出来、ヨーロッパ各地からお金が集まり始めます。

さらにスイスは地形的に天然の要塞みたいなところがありますから、資産を安全に戦乱から逃避させるには絶好の場所って事が、欧州の金持ちに認識されるようになります。そして19世紀の初めには、ヨーロッパ諸国の間で「スイスは永世中立・不可侵」とする条約が結ばれ、暗黙の了解として「金を置いておくならスイス」ってことになって行きました。何せスイスは今世紀に入るまで国連加盟国じゃなかったですからね。スイスの国連加盟は2002年、世界で190番目なんです。

こうして世界の富を集めることになったスイスの銀行は、お金持ちの個人的相談に乗るのがメインの仕事になって行きます。スイスの銀行に口座を作ると、あらゆる金融サービスを提案してくれるんですが、例えば「税金の安い国に資産を移したい。」とか「タックスヘイブンに会社を作りたい」なんて相談をすると、あっという間に現地の法律事務所を紹介してくれて、会社設立まで面倒見てくれます。個人で世界のどこかの税金の安い国に会社を作るなんてハードル高すぎますが、近くのスイス系銀行に口座を作るだけなら簡単ですからね。お金さえあればですが。

今回流出した例のパナマ文書で判明したタックス・ヘイブンの会社設立に、世界中のプライベートバンクが関わっていたのはこういう理由です。

image by: Shutterstock

 

辛坊治郎メールマガジン

著者/辛坊治郎
「FACT FACT FACT」をキーワードに、テレビや新聞では様々な事情によりお伝えしきれなかった「真実」を皆様にお伝えします。その「真実」を元に、辛坊治郎独自の切り口で様々な物の見方を提示していきたいと考えています。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • なぜスイスは「世界の銀行」になり、日本は富裕層に避けられるのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け