日本に抜かりはないか?パラリンピックを成功させてこそ「一流国」

 

パラリンピックの精神とは……

パラリンピックはもともとイギリスが起源で、第2次大戦で損傷した傷痍軍人のために車椅子アーチェリーを催したことから始まったとされる。イギリスでは障がいがあってもスポーツを楽しむ雰囲気が国中にあり、ある種の成熟した国家を思わせる。日本でも最近、道や電車の中で車椅子に乗ったり、障がいのある人を手助けする光景が見られるようになってきた。

ただ、100ヵ国以上の国から4,000人以上の選手がやってきて、それを見物する観客も大勢訪問した時、日本はどう対応しようと考えているのか。健常者のオリンピックのことでこれだけもめていることを考えると、はたしてパラリンピックの運営やバリアフリー化、資金補助、本当の「おもてなし」などの準備も進んでいるかと気にかかってくる。日本が成熟した国であることを示す良い機会がパラリンピックの運営と国民の協力だろう。

企業も巻き込んで本当の「オリンピック・パラリンピック」の成功へのスケジュールと協力体制を、今から準備しておくべきだろう。オリンピックのメダルの数だけを気にしていたら日本のおもてなし精神もそんなものか」といわれかねない。

オリンピックがどんどん商業化し、アマチュアだけでなくプロ選手も出場できるような時代だ。現在の東京オリンピック論議は、国立競技場の新建設のムダな資金やデザイン、主催する東京都の舛添前知事のスキャンダルなどの話ばかりが先行し、一体どんな東京五輪にしたいのかという精神や哲学はそっちのけになっている。1964年の東京五輪は日本中が湧いていくつかのレガシー(遺産)を残し、スポーツ振興の大きなきっかけにもなった。

2020年まであと4年、どんなオリンピックにするのか、国民的議論はほとんどないし、協力する企業はかなりの資金を出すのだろうが、企業からの声も聞こえてこない。今のままの雰囲気で進むと、国民の関心は薄れてしまうのではないか。どんなスポーツ健康国、障がい者スポーツ支援の国を目指すのか、一部の五輪関係者の話にするだけでなく、そろそろ国民の東京五輪に向けた本音や方向性を聞いておいた方がよいのではないか。

(TSR情報 2016年6月27日)

image by: Jane Rix / Shutterstock.com

 

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