例えば生まれてすぐの新生児が、NICU(新生児集中治療室)に入ったとします。そうすると、その子のお母さんの心理状態はどうかというと、
「ごめんね、ごめんね」
を連呼するというケースがほとんどです。
というのも、生まれてすぐに保育器の中に入れられるので、自分の腕で抱くこともほとんど許されないんですね。
いまは500グラムで生まれてきた子もちゃんと育つといわれていますが、お母さんにしてみると、小さい状態で産んでしまったことで自分を責めてしまい、そんな自分を受け入れられないまま子育てがスタートします。
そうすると子供が大きくなっていっても、そのことが気持ちの中にずっと残るんですね。
だけど気持ちを楽にしてくれる誰かが入ることによって、例えば病室にいる子供に近づいていくと、最初は驚いて泣き出したり、ちょっと嫌がったりする。
その時に、
「ああ、やっぱり嫌われちゃったな。お母さんちょっと顔を見せてあげて」
と言って、お母さんに助け船を出してもらうんですよ。それでその子が泣きやんだりすると、
「やっぱりお母さんは違うな」
って言う。
『致知』2016年9月号【最新号】 連載「生命のメッセージ」 p102
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