米大統領戦後に勃発か。第3次世界対戦の危機に怯えるロシア国民

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先日掲載の記事「プーチンは本気なのか。ロシアがアメリカに突きつけた最後通牒」でもお伝えした通り、シリア停戦合意後のアメリカの空爆(アメリカは誤爆と主張)以降、米ロ関係は急速に悪化し、ロシア国内では、「第3次世界大戦が近づいている」との噂話がまことしやかにささやかれています。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者でモスクワ在住の北野幸伯さんは、この騒ぎもアメリカ大統領選までだとの見方を示しています。

「第3次世界大戦」を恐れるロシア国民

ロシア国民の約半数は、「第3次世界大戦が起こる可能性がある」と恐れているそうです。

ロシア国民の半数「シリア空爆は第3次大戦の引き金」 世論調査

AFP=時事11/1(火)9:16配信

 

【AFP=時事】ロシア国民の半数近くは、ロシアがシリアで行っている空爆作戦が引き金となり第3次世界大戦が勃発することを恐れている──。

 

ロシアで10月31日、こんな世論調査結果が発表された。

復習しておきましょう。シリアでは、2011年から内戦が続いています。ロシア、イランは、シリアのアサド現政権を支援している。アメリカ、欧州、サウジ、トルコなどは、「反アサド派」を支援している。とはいえ、停戦に向けた努力もあります。アメリカとロシアにより今年2月、アサド、反アサド派が停戦合意に達しました。しかし、後に崩壊。

9月9日、アメリカとロシアは、2度目の「シリア停戦で合意します。9月12日、停戦合意が発効しました。ところが9月17日、事件が起こります。アメリカの空爆で、ロシアが支援するアサド軍の兵士が60人以上死んだ。アメリカは、「誤爆だと説明しましたが、ロシア側はこれを信じませんでした。カーター国防長官が、「停戦をぶち壊すために、わざとやらせた」というのが、ロシアの見方です。2度目の停戦は1週間で崩壊。以後、アメリカとロシアの関係は急速に悪化していきます。

10月4日、ロシアは、シリア・タルトゥスの海軍基地に地対空ミサイルS300を配備しました。反アサドは航空戦力を持たない。つまり、これは反アサド派と戦うための武器ではない。アメリカ軍がアサド軍を空爆し始めたら、撃ち落とすため。つまり、「アメリカ軍と戦うため」なのです。これらの目的は、ロシアのテレビニュースで大々的に放送されていて、ロシア国民は不安になっている。

調査はロシアの独立系調査機関レバダ・センター(Levada Centre)が先週実施した。

 

それによると、国民の48%が「ロシアと西側諸国との間で緊張が高まり、第3次世界大戦に発展しかねない」との懸念を抱いていることが分かった。この割合は今年7月の29%から跳ね上がった。
(同上)

48%が、「シリア問題が発展し第3次大戦が起こる可能性がある」と考えている。2回目の停戦合意が壊れ、米ロ関係が急速に悪化したことと関係があるのでしょう。

ロシア政府による空爆はロシアの対外イメージに悪影響を及ぼしていると思うと回答した割合も32%と、昨年11月の16%から倍増した。
(同上)

「ロシア政府による空爆は、ロシアの対外イメージに悪影響を及ぼしている」と考える人が増えている。ここだけ見ると、「嗚呼、ロシア国民も『反戦』『反プーチン』になっているのだな~」と思えます。ところが、そうではないのです。

一方で、ロシアの空爆を支持すると答えた人は52%に達し、反対の26%を大きく上回った。ロシアは「シリア問題への介入」を継続するべきだとした割合も49%に上り、そう思わないと答えた人の28%を圧倒した。
(同上)

この件、少し補足が必要でしょう。ロシア国民は、「合法的政権であるアサドを守るのは、『正義の戦い』」と信じています。つまり、「空爆が対外イメージに悪影響を与えている」というのは、空爆が「悪いこと」だからではなく、「ロシアが情報戦で負けているからだ」と考えている。

ロシア国民は、「善悪論でいえば、ロシアは絶対的に善なのだ」と考えている。(なかなか、日本国民には、理解しがたいと思いますが…)。そんな意識が、「空爆支持52%、シリア介入支持49%」という数字に表れているのです。

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