日本のモノ作りは本当に衰退しているのか? 米独比較で見えた希望

 

ドイツの現状

日本と比較されるのがドイツであるが、自動車などエンジンや化学産業が強く、このドイツでもマイスター制度で匠の技術を保持している。現状、世界的なワンセットの産業基盤を持つ国は日本とドイツであり、中国が急速に日本の技術を吸収してワンセットに近くなっている。

ドイツも自国通貨より通貨安水準のユーロにより、輸出が大変な活況にあるが、クーガなどロボットや機械産業は、日本に負けている。ドイツはEUから多数の労働力も確保できるので、日本のように中国・EU以外の世界に出て行く必要がない。米国などでは日本企業との競争になり、不利であるので無理してまで出ようとしない。

このため、メルケル首相はトランプ大統領に強い口調で注文ができるのである。消費規模が米国と同様程度あるEU市場と、米国より大きな中国市場があり、それでドイツ企業は繁栄出来るためである。

このため、米国の誘いに乗らない。EUを守ることになる。米国とは衝突する可能性がある。また、米国より中国を選択する可能性もある。

米国の政策

米国が優位なのは、IT産業と航空機・兵器産業であるが、グーグルなどIT企業は、世界から優秀な人を集めて、世界的なソフト分野を開拓しているが、この分野は、人口の1%程度の論理力がある優秀な人間を多数、雇用して作るしかない。このため、世界から優秀な人間を集めてきている。このため、米国の白人は少数になる。

トランプ政権で今問題にしているのは、白人労働者を多数雇用してくれるような付加価値の高い産業が必要なのである。ということで、技能の高い外国人技術者を米国に入れるのではなく、IT企業にも多数の白人労働者を雇用しろということになるが、IT企業の競争力は大きく落ちることになる。無理をすると、IT企業の米国離れも引き起すことになる。

米国政治状況は、世界から安価な製品輸入で世界を助けることより、製品が少し高くても米国の白人労働者を助けることが必要とトランプ大統領が当選したのだ。

米国は自国生産になり、新興国からの輸入を減らすことになる。今までは、米国の製品輸入と原材料輸入の中国が世界経済を引っ張ってきたが、中国の経済成長も止まり、米国は自国生産になるので、米国以外の世界的な成長余力はなくなる。新興国の輸出先がなくなり、成長ができないことになる。米国では、世界的な効率化より自国が優先ということになる。

米国は、世界の人権とか自由とかのリベラルなことより、自分や家族や自国民が生きていくことの方が重要であると有権者が考え始めたことで、米国の政治革命が起こったのだ。日本は昔から、変わらずに自国しか考えていないが、米国は本当にグローバルなリベラルを考え、世界に介入してきた。それを止めるようである。

自国民優先になるので、産業的には非効率化になることもあり、ナショナリズムでありコーポラティズム(統制経済、協調主義)になる。これも今の日本である。

しかし、米国は自国産業で製造業のワンセットを持っていないので、日本企業の技術に頼る事になる。日本は、アジアの産業を興し、そして今、米国の産業を興すことになる。日本が米国を助ける事になる。安倍首相がトランプ大統領から歓待されるのは、日本企業の工場を米国に建ててほしいからである。

その代わり、日米同盟を完全に履行するし円安には歯止めが必要であるが、それほど無理な要求はしないようである。麻生財務相は、1ドル=120円までの円安はOKという。

そして、円ドルリンクを志向したほうが良いと私は見ている。バーゼル3との見合いで、円暴落を防ぐことにもなるためである。早めに10年先を見据えて準備するべきである。

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