創業318年、かつお節の老舗「にんべん」が今も常識を破り続けている

 

スイーツにも鰹節?~挑戦の連続だったにんべんの歴史

鰹節の需要が減っていく中で、にんべんは今までなかった鰹節の商品を続々と開発している。「手巻きかつお」(368円)、「食べるうまみチップス」(378円)……「だしおこげ(江戸前醤油・味噌)」(399円)は、鰹出汁の特製ダレをたっぷり塗って焼き上げた焼きおにぎりのようなおせんべい。「みたらしバームクーヘン」(1296円)は、看板商品の「つゆの素」で作ったみたらしをコーティングしたバウムクーヘンだ。

こうした実験的な商品を直営店で販売し、お客の反応を見ているという。

「これらはメインではなく、きっかけとして手に取っていただく入口の部分だと思います。美味しいと思っていただければ、実際の鰹節に戻ってきていただければ」(髙津)

実はにんべんの300年の歴史も新しい挑戦の連続だった。

にんべんの創業者は伊勢出身の初代・髙津伊兵衛。江戸中期の元禄時代、日本橋で始めた鰹節を中心とした乾物屋がにんべんの始まりだ。

店の名前は、伊勢出身の伊兵衛ということで「伊勢屋伊兵衛」に。店の印は伊勢の「伊」、伊兵衛の「伊」から「にんべん」を採用。その印を見た江戸町民が「にんべんさん」と呼ぶようになり、やがて今の社名となった。

にんべんは初代の頃から新しいことをやっていた。その証が店舗の壁に残っている。書かれていた文字は「現金掛け値なし」。店が客を見て値段を決める時代に、どの客にも同じ値段で売る商いのやり方だ。三越の前身、越後屋が始め、伊兵衛もいち早く取り入れた。

江戸後期には、世界で初めて商品券に当たるものを発行。好きな時に鰹節が買えると、贈答用に重宝されたという。

昭和の時代も、にんべんは常識を覆す商品を作る。それが「つゆの素」。当時業界では、鰹の天然出汁は足が早いため、麺つゆに使うのは不可能と言われていた。しかしにんべんは独自の殺菌法や調合の割合の工夫などで問題を克服。日本初となる鰹の天然出汁のつゆを作り上げた

さらに今では当たり前となった、小分けパックの削り節「フレッシュパック」にもにんべんの発明が。鰹節は封を開けると、どうしても酸化し味や風味が落ちてしまう。そこで小分けしたパックに窒素ガスを入れ酸化を防ぐ、日本初の使い切り商品を考案したのだ。

こうした挑戦を積み重ね、にんべんは押しも押されもせぬ老舗の地位を確立した。

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