歴史を知れば見えてくる。年金はなぜ、今の金額に決められたのか

 

しかし年金額を上げるにしても、それに必要な保険料をなかなか上げていかなかったんですね。もともと、年金は積立から始まったものですが、取る保険料が全然足りなかった。当時の厚生省が保険料をこれだけ増やさなければ! って言ってるのに、政府も世間も年金上げるのはいいけど、負担を増やす(保険料を上げる)のはダメ! って反対したから。

そんな高い年金額を支払うためにどうしたかというと後代の負担でお願いしますということになっていったんです。戦後のハイパーインフレで積立金も価値が暴落する共に、現役時代の賃金と老後の年金の差が開くのを避けるためにこういう急激な年金水準の引き上げと、それに見合う取るべき保険料を取らずに来た事が、今の賦課方式(現役世代の保険料をそのまま年金受給者に仕送る)に繋がっていった。

賦課方式は景気には左右されにくいですが、少子高齢化が弱点。高齢者が増えて、年金保険料を納める現役世代が減ってしまうと、ますます現役世代から高い保険料を取らないといけないから。

昭和60年改正で、国民年金を国民全員共通の基礎年金を導入した上でその上に報酬に比例する年金(厚生年金や共済年金)を支給するっていう綺麗な形になりました。これが今の年金の形となっています。これを編み出した当時の山口新一郎年金局長という人が法案成立前にガンで亡くなられ、それを引き継いだ部下の人達が昭和60年改正で成立させた。

この大改正の時に、大幅な年金水準の適正化年金を下げる)が行われた。従来のままだと、今後雇用者が増えて将来40年働くのが主流となってくるとしたら、年金水準が現役時代の60%台(30年間労働で)ではなく80%台(40年労働)を超える事になるような仕組みだったから。こうなると厚生年金保険料率も38.8%になる見通しとなり、世代間の不公平がますます拡大してしまう事になりかねない。

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