遂に株式上場、糸井重里「ほぼ日」をプロが分析してわかった弱点

 

S:ほぼ日の強みはどこにあるのか?

ほぼ日の強みは、旧社名の株式会社東京糸井重里事務所が示すように、糸井重里氏個人の人的魅力にあるといっても過言ではないでしょう。私自身、8年前に『ほぼ日手帳』の爆発的なヒットの秘密を探るべく、糸井氏本人に取材した経験がありますが、直接お会いして、気さくで腰が低く、とてもユーモアに溢れた方という印象を強く持ちました。表現すれば「ほんわかという抽象的な言葉が当てはまると思いますが、Webサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』には、まさにその「ほんわか」とした雰囲気が漂い、くすりと笑えるような記事が多く、訪れる者を癒します。そして、ついつい繰り返し訪問することで、糸井氏が醸し出す『ほぼ日刊イトイ新聞』の魅力に引き込まれ、ほぼ日のオリジナル商品を購入するという流れになっているのです。つまり、ほぼ日の「最強の武器」は『ほぼ日刊イトイ新聞』といえますが、その魅力は糸井氏本人によるものが大きいということなのです。

W:ほぼ日に弱みはないのか?

ほぼ日の弱みとしては、これは強みの裏返しになりますが、糸井氏の影響力が強すぎるために、もし糸井氏が何らかの理由でいなくなるようなことがあれば事業に多大な影響を与えるということでしょう。糸井氏は現在68才とまだまだ若く、今後も代表としてほぼ日を牽引していかれることと思いますが、永遠に続けていくことはできません。そこで、今回の上場は、糸井氏個人の影響力を徐々に弱め企業としての信用力を高めていく狙いもあるのではないでしょうか。

また、事業ポートフォリオと販売チャネルの観点から事業を分析した時に、商品では『ほぼ日手帳』、販路では『ほぼ日刊イトイ新聞』にあまりにも偏り過ぎていることは事業上のリスクであり、弱みと捉えることができるでしょう。

手帳はスマートフォンの急速な普及などデジタル全盛の世の中でも、安定的な売り上げをキープしています。日本国内で1年間に購入される手帳は1億冊にも上り、ほぼ日手帳も発売初年度となる2002年版は1万2,000部でしたが、2016年版では61万部にまで成長を果たしています。手帳は一旦使い始めると、毎年同じものを使うという人も多く、安定的な成長が見込める半面、販売される時期が短く、売り上げが偏るという問題に直面します。この時期的な売り上げの偏りも弱みであり現状の課題として挙げられるでしょう。

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