バスは再び発車し橋を渡り、ソウルから約2時間のところに国連軍の駐屯基地へと到着しました。そこには武装した兵士が多数いて、バスの中で渡された宣言書を提出し更にパスポートを確認すると、国連軍ゲストと書かれたネームプレートを首から下げるよう指示され、食堂へと案内され、ちょっと早めの昼食となりました。この食事がとてもおいしく感じたのです。とくにスープの味は今でも忘れられません。
食事時間が終わり、いよいよ非武装地帯へと向かうのですが、ここからは国連軍のバスに乗り換えさせられ前後を警備のジープに挟まれ重々しい雰囲気で出発しました。この非武装地帯は境界線に有刺鉄線の金網が張ってあり厳重に管理されていて、道路にはゲートで点検を受けて入ります。さらにあちこちに銃を構えた国連軍の兵士の警戒する姿が見え、かつての激戦地だったことを思わせました。
この非武装地帯は、38度線の境界線を中心に南北2kmが朝鮮半島を二分している地帯になっています。やがてバスは目的地の板門店に到着。38度線上に小さな建物がいくつか建っていて、向こう側には北朝鮮の兵士が銃を携えた姿があちこちに見え緊張しました。
国連軍の兵士の案内で建物の内部を見学。部屋の中央に横長にテーブルが置かれ、その中央に38度線を示す線が引かれ、時折開かれる南北会談の際にはこの線を挟み、北側に北朝鮮、南側に韓国の役人が座り話し合いが行われるそうです。
窓から北側を見ると、北朝鮮兵士が手招きで「おいで、おいで」と手を動かしていますが、宣言書を守り、これを無視しました。建物の外に出ると、路面にはっきりと境界線を示すラインが引いてあり、北朝鮮兵がラインまで来てなにやら話しかけてきて、とても緊張しました。同行者の話では、過去にラインを越えて行った見学者が北朝鮮兵に捕まり連行されて以後、行方がわからなくなったそうです。この話を聞いてゾォーっとしました。そして急いでラインから離れたのです。
ここは、まさに戦闘なき戦場といった場所に思えました。常に南と北がにらみ合い、監視し、何とか平穏を保っているようです。この状態がはたしていつまで続くのでしょう。そして同一民族同士がどうして、こんな状態になってしまったのでしょうか。