「戦後」はまだ続くのか? 安倍談話が触れなかったこと

 

いわゆる「昭和の戦争」の背景として、西洋諸国の植民地支配を挙げつつ、「日本には日本の正義があった」ことに触れなかったのもそうですが、より重大だと思うのはこちら。

第2次大戦後の国際秩序について、善意に基づいた公正なものと位置づけすぎている点です。

関連して指摘したいのは、戦後70年間の歴史をめぐり、安倍談話がある事柄について、まったく触れなかったこと。

お分かりですね?

1989年まで続いた、アメリカとソ連(現ロシア)の構造的対立、いわゆる「冷戦」です。

談話によると、わが国が敗戦後の苦難を切り抜けられたのは、日本人みずからの努力に加えて、

敵として熾烈(しれつ)に戦った、米国、豪州、欧州諸国をはじめ、本当にたくさんの国々から、恩讐を越えて、善意と支援の手が差しのべられたおかげ

となっていますが、これはいささかキレイゴトにすぎる。「善意と支援の手」の陰には、ソ連をはじめとする社会主義諸国に対抗するうえで、日本を自分たちの側に引き込まねばならないという、アメリカの戦略的な計算がありました。だからこそ、豪州や欧州諸国も同調したのです。

ここを看過してしまうと、「アメリカに代表される自由主義的な価値観=世界の普遍的な正義」ということになりかねません。中国や韓国に謝罪を続ける宿命から解放されるかわり、アメリカに感謝と協調(ないし追従)を続ける宿命が待っている次第。

「愛国のパラドックス」に収録された「日米協調はなぜ絶対視されるのか」や「韓国の反日を封じ込める道はある」でも論じましたが、本当の歴史(認識)問題は、中国や韓国との間ではなく、アメリカとの間にある。向こうが求めてくるものが、反省や謝罪ではなく、構造改革や規制緩和なので、事の本質が見えにくくなっているだけなのです。

※詳細はこちらをどうぞ。
愛国のパラドックス: 「右か左か」の時代は終わった」(アスペクト)

自民党の高村副総裁は、最近の講演で「頼むから オウンゴールは やめてくれ」という川柳を披露しましたが、それにならえば「めでたさも 中くらいなり 安倍談話」というところではないでしょうか?

ではでは♪

佐藤健志

image by:自由民主党

 

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