稲作に不向きな日本を、世界の「コメどころ」に変えた先人たち

 

灌漑田耕作が、勤勉、真面目、几帳面な民族を作った

我々の祖先はこのような手間をかけて灌漑田を作り、それを毎年毎年耕し、肥料をやり、雑草をとって、少しでも質の良いコメを、少しでも多く作ろうと、数千年、取り組んできたのである。それが日本民族の性格に影響を与えた

京都大学霊長類研究所・元所長の久保田競(きそう)名誉教授は、こう語っている。

…灌漑農業をやるようになると、農業には考えるということが絶対必要になった。水を引くとか、堤防を作るとか、耕すとか、苗を植えるとか、雑草を取るとか、天候や気候のことを考えなくてはいけませんし、そのようにして計画的に、先を見ながら、よく考えながら、手足身体をこまめに動かしてコメ作りをやってきたということが、勤勉さや真面目さ、几帳面さといった日本人の性格を作り上げ、また知的な興味も湧いてくるようになったのではないでしょうか。
(同上)

東南アジアでは、天水田による天然自然に任せたままのコメ作りが行われている、と冒頭で述べたが、実はいくつか例外がある。

その一つ、ベトナムでは灌漑田耕作が行われており、日本の水田のように、田が整然と仕切られ、畝が作られ、苗が整然と植えられ、除草、施肥、耕耘、土壌作りが丹念に行われている。コメは基本的にインディカ米だが、ジャポニカ米のように背丈が低く、相当な品種改良が行われているようだ。

ベトナム人は、東南アジアの中でも勤勉真面目几帳面で、「日本人によく似た民族」と言われている。そう考えると、モンゴル帝国がアジアで侵攻に失敗したのは、日本とベトナムである。さらに両国とも日清戦争や中越戦争で中国を破り、アメリカにも手を焼かせている。

日本人とベトナム人が、似たような性格を持っているのは、似たような灌漑田耕作をしてきたからだと言えるのではないか。

近代工業が花開く土壌を作った稲作文化

欧米で発達した近代工業を日本がいち早く導入し、なおかつ様々な分野で追い越してしまった、という発展には、灌漑田耕作で培われた勤勉真面目几帳面さが大きく寄与している。久保田名誉教授は、こうも語っている。

たとえば、QC(品質管理)活動などは、もともと西欧で開発されたものですが、日本で定着してしまった。農作業はある意味で絶え間ないQC活動の連続のようなものですから、生産性向上、品質向上、粗悪品を出さないといった活動をやることついては、日本人は何の抵抗もないわけです。
(同上)

ベトナムは早くからフランスの植民地とされて近代化が遅れたが、最近は多くの日本企業が脱中国の一環として進出している。筆者もいくつかの代表的な日系工場を訪問したことがあるが、職場は整然と規律正しく技能訓練は熱心に受講するなど、日本的なモノ作りとの相性の良さを感じた。今後、ベトナムの工業は急速に発展していくだろう。

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