都内でエボラなど危険な病原体を扱う施設が稼働へ。漏れる心配は?

 

しんコロさんの回答

馴染みのない方々のために簡単に説明をすると、バイオセーフティレベル(BSL)とは、細菌ウイルスなどの病原体を取り扱う実験室施設格付けのことを言います。例えば、BSL1は病原性が低い微生物を扱う施設で、BSL2はインフルエンザウイルスなど、病気は起こすけれども実験者やその周りに重大な災害を起こす可能性はほとんどない病原体を扱う施設、BSL3は人や動物を死に至らしめる病気を起こす微生物を扱う施設、そしてBSL4はエボラウイルスなど、重篤な病気を引き起こし、なおかつヒトからヒトへ感染する微生物を扱う施設のことです。

危険度の高い微生物だけに、そういった施設の稼働は近隣住民の反対を受けるのは当然のことと思います。武蔵村山の施設も30年以上前に完成していたのにもかかわらず、住民の反対で現在までBSL4の稼働ができませんでした。

さて、僕自身研究でBSL3レベルまで自分が入ることはありますが、安全対策はなされているので身の危険を感じるようなことはありません。当然、BSL4になればさらに安全対策は徹底されるので、病原体が外に漏れることはまずありません。BSL4の施設から病原体が漏れることよりも、海外からエボラウイルスや他の危険な病原体に感染した人入国する可能性の方がずっと高く、それらが万が一流行した時に日本が対応できるかどうかが重大な課題になります。その意味で、日本独自に研究をする必要があるとの判断からBSL4の施設の稼働も必要だという結論に至ったのでしょう。

さて、福島原発事故のこともあり、病原体が漏れることに対してはどうしても恐怖感があることかと思います。しかし、病原体放射性物質では決定的に違う部分があります。放射性物質は直接触れなくても生物に害を及ぼすし、かつに動物や植物や水や土壌などあらゆるものを汚染し、さらに半減期も長いという厄介者です。一方、ウイルスは必ず感染する宿主が必要で、単体では生きていけないので、土に撒いても川に流れてもそのうち死んでしまいます。従って、万が一外に漏れたケースを想定しても、原発のような被害にはならないでしょう。

また、BSL施設は原発とは違い、爆発するような核エネルギーがあるわけではありません。万が一地震などで施設が崩壊しても、病原体空中撒き散らされるようなことはないでしょう。もちろん、研究者が知らずのうちに感染して、そこから地域住民に広がるという懸念もあるかとは思いますが、安全対策からして研究者が感染するケースはまずないと言って良いと思います。むしろ、繰り返しになりますが海外から感染した人が入ってくる可能性の方がずっと高く、その脅威を無視することはできません。

ということで、BSL施設が稼働される安全性に関しては、心配する必要はないというのが研究者としての意見です。

image by:Shutterstock

 

shinkoro

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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