甚だ疑問。「大学入試共通テスト」をドラゴン桜の指南役が斬る

 

でも、これで、思考力・判断力・表現力を測っていると言えるのでしょうか? そもそも入試改革の当初に目指したのは、「主体性を持って人生を切り開いていく力」「混とんとした状況の中に問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造していくための資質・能力」としての思考力・判断力・表現力だったはずです。

でも、少なくともモデル問題でそれが計れているとは言えません。「記述式テストで文章を書くのだから表現力のテストになっている」とお茶を濁しているのです。

高校や予備校ですぐに傾向と対策が分析されて、受験指導が始まるでしょう。すると、当初目指した思考力・判断力・表現力を測るという趣旨はどこかにいってしまいます。

もう一つ、モデル問題を見ると採点の難しさも想像できます。モデル問題の各問について「正答の条件」が示されていて、正答の条件のすべてを満たした解答が正答になります。

それ以外はすべて誤答でバツになるというわけでもなく、部分点がつきます。条件を満たしていない部分が増えれば増えるほど点数が下がる、ということだと思います。

しかし、この部分点というのが曲者です。

朝日新聞の報道では、

新たな記述式問題の採点は民間業者が担い、一つの答案を複数の人が担当する仕組みになりそうだ。国語では、正答に必要な要素の一部だけを書いた場合に「部分点」を認めたり、段階別評価をしたりすることも検討されているが、詳細は決まっていない。

とのことです。

自由な解答より採点しやすさ優先 センター試験後継案

もちろん「正答の条件」を示すことで、部分点の統一的な基準も一応できるのですが、それでも「これは部分点をつけるべきか、否か?」と迷わせる解答が必ず出てくるのが記述式テストなのです。

そうなったとき、どうやって公平性を担保するのでしょうか? 膨大な量の答案を、民間業者が雇った数多くの人たちが短時間で採点するのです。その人たちの学力は大丈夫なのでしょうか? 正しく採点する能力のある人ばかりが集まるのでしょうか?

1点の違いで合否が分かれる入試で、公平性の担保は絶対条件のはずです。

print
いま読まれてます

  • 甚だ疑問。「大学入試共通テスト」をドラゴン桜の指南役が斬る
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け