日本の「モノ」(素材)を「こと」(体験)にする戦略とは?
定食の大戸屋がアメリカで支持され、利益を生み出せた要因は、実はアメリカの個性的な街ニューヨークマンハッタン(山手線内側ほどの小さな島、周辺エリアを含め人口800万人以上)で働く所得の高いオフィスワーカーや住民や観光客を対象に、露出度の高い路面店(通行客が多い)を立地に、高級なだけの日本食に価値を感じなくなってきたミレニアル世代(1980年生まれ、約8,000万弱人口)の価値観にアップグレードカジュアルダイニング業態(定食の大戸屋)が(価格も含め)対応したからです。
大戸屋は2016年6月からチップ制度をも廃止(チップはサービススタッフのみが受け取れるため、スタッフの能力経験を反映させた公平な評価に基づく評価を導入するため)し、同社の日本の食へのこだわり(上述)を実践できるスタッフを能力として評価。
アメリカで再現された大戸屋のアップグレードカジュアルダイニングという業態は同業態競合他社(一風堂、牛角、つるとんたんなど)との美味しさの違いを明らかにしました。
大戸屋が、2014年炉端屋(ランチ18ドルなど、目の前で調理する日本の食文化)、2015年天婦羅まつ井(「なだ万」ホテルニューオータ二店「天婦羅まつ井」でチーフ本部天婦羅部統括松井シェフをチーフシェフに迎え、日本の食文化天ぷらをアメリカにまだない天婦羅専門店で目の前で提供、ランチ40ドルディナー懐石コース200ドル)をオープンしたことは、日本食の売り(目の前で調理)を訴求することで2020年までに海外150店体制へ向けて勝ち残りへ舵をきっている証拠でもあります。
同社は、日本で起こる少子高齢化を目の前に、多様な外食機会とあらゆる所得層が存在するマンハッタンという立地をフルに活用し、カジュアルダイニングの応用(炉端屋)とファインダイニング(天婦羅まつ井)を専門化した業態で更なる市場を開拓しようとしているのです。