2020年が分岐点。日本が本気で導入しないとヤバい「経営資源」

 

日本の店舗での、電子マネーの利用は世界に遅れています。クレジット・カードを含むキャッシュレス化の比率では韓国89%、中国60%、カナダ55%、英国55%、オーストラリア51%、スウェーデン49%、米国46%、フランス39%、インド38%ですが、日本は18%であり、ドイツも15%と低い(「キャッシュレスの現状と今後の取組」2015年:経産省調査)。

電子マネーは、レジでの清算を自動化させます。スマホや電子マネーがチャージされたカードをかざすだけで決済が終わるからです。

店舗は、商品をスキャンし、代金を受け取るレジで人件費の35%くらいを使っています。他にも、AIで自動化できる商品管理・在庫管理は人件費の20%でしょう。そのコストは、今の店舗売価になっています。

(注)わが国のスーパーの値入率は、18%から27%です。「値入率=値入額÷(仕入れ代金+値入額)」です。コンビニは、店舗段階の値入率が15%くらいです。

タクシー料金では、ドライバーの人件費率は70%です。1,000円の料金で約700円、管理費・車両費・燃料費・保険が300円です。商品の輸配送では、約50%がドライバーの人件費です。ネット販売の宅配の費用は一件当たりの平均が約400円(段ボール1個)ですが、200円は、AI配送で代替できる人件費と見ていい。

あれよあれよと、AI革命の時代になりました。あらゆる既存産業は、人手を多く使っている労働部分で、AIの導入へ向かわないと、コストの競争優位を失っていくでしょう。2020年はそういった時期への分岐点です。会計も、クラウド会計になって行きます。

屋台の店舗でも、電子マネーの利用比率を高めた中国は、これを知っていますが、2000年代の、内需ゼロ成長の日本では、「うかうかしている会社が多い。隣にできた店舗に、コストの競争優位を失ったあと、やおら追いかけても遅いのです。

デジタルテクノロジーの導入では他より早いことが必要です。アマゾンの仮想店の開発は、1995年でした。それから23年。どこでも仮想店が作れますが、どこも、アマゾンに追いつくことができない。

1社総取りになる傾向が強いデジタル技術では先行するものに追いつくことが容易にはできないからです。プログラムは複写のコストが、ほぼゼロです。物的な店舗を作るには、その都度、一定のコストがかかります。仮想店で、商品種類(売り場面積)を増やしても、追加のコストはほとんどかからない。そのため、販売額の増加とともに、値入率を下げて行くことができるからです。

ソフトコストが年々、目に見えて安くなるデジタル技術は、そういった「一人勝ちをさせる性質をもっています。最初は、コスト高です。そのコストは、年々、大きく下がって行きます。

インターネットのWiFiも、現在の2Gから、5Gに高速化する時代です。5Gはデータの送受信コストの、劇的な低減(1/100)をもたらします。送受信の高速化は、データ当たりのコストの低減と同じことです。

成長経営のコツは、「これから安くなるものを豊富に使い高くなるもの人件費の使用を減らしていくこと」です。AIとデジタル技術は、これから安くなるものの典型です。今後はAIとデジタル技術を、経営資源にしなければならない。

image by: Shutterstock.com

吉田繁治『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』

『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』

著者/吉田繁治

読むと目からウロコが落ちると評判の経営戦略。面白く読むうちに高度な原理がスッとわかります。■経営戦略、小売・流通、情報技術戦略、金融・経済、ロジスティクス、EC、SCM、CRM■などの良質な情報の提供。

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