台湾人「外交官」を自殺へと追い込んだ、中国の卑劣な偽ニュース

 

蘇氏の自殺後に出てきたこれらの情報を整理すればするほど私が思うのは、中国のしたたかさは本当に徹底しているということです。助けを必要としている台湾人に向かって、中国人と言えば助けてやると踏み絵を踏ませながら、全員助けない上に台湾人に台湾政府を攻撃させる

情報時代の仕組みを多いに利用した心理戦に、台湾人はまんまと乗せられ自殺者まで出してしまったというのが真相のようです。また、台湾内の野党と与党の争いも利用されています。蘇氏は民進党に迷惑をかけたくないという気持ちもあっての自殺だったのではないかというのが、もっぱらの噂です。

蘇氏は優しい男でした。日台交流に熱心でした。今回、日本でのトラブルが利用されたのも意味があるのではないでしょうか。内容的には、あくまでも中台の争いですが、その舞台に関空が選ばれたのは、中国が日台の相思相愛ムードにやきもちを焼いてのことだったのではないかと私は勝手に推測しています。台湾人どうしを争わせると同時に、日本のイメージダウンを狙って相思相愛を阻止しようとするあざとい思惑があったのではないか、そう邪推してしまいます。

今回の事件で日本側にはこれといって落ち度はありませんが、強いて言うなら、日本側が中国の発したフェイクニュースをもっと早くに否定するべきでした。国籍は関係なく、みな同じように救助するから、当事者や関係者たちは焦らず慌てずに冷静に対応して欲しいと、早い段階から呼びかけるべきでした。

逆に、今回最も批判すべきは台湾のマスメディアでしょう。いくら国民党の息のかかったマスメディアがあったとしても、台湾は中国とは違って民主主義です。報道の自由はあります。

国民党系ではないメディアは、中国が流した偽ニュースの真偽について慎重になるべきでした。中国側の偽ニュースを台湾のメディアが闇雲に拡散した結果、台湾の世論はモンスター化して、蘇氏を追い込む結果となったのです。情報は武器になる。我々は、蘇氏が残してくれたこの教訓を胸に刻み、同じ過ちを繰り返さないよう努めるべきです。

領事館が戦争や政争に巻き込まれるというニュースは数えきれないほど多くあります。かつて、日本の領事館関係者が中国からのハニートラップを仕掛けられ、「国を裏切ることはできない」と言って自殺した事件がありましたが、私は痛く感動しました。

蘇氏の自殺についての真相はなおも不明な点が多々ありますが、もしも中国のフェイクニュースが原因なら、偽ニュースの犠牲者の一例として教訓に残る事件となるでしょう。

目下、台湾は地方選挙(中間選挙にあたる)運動の真っ最中です。野党国民党も中国政府と手を組んで政権奪還を目指しています。反日日本人も、このチャンスに日本を貶めることに躍起になっています。例えば、台湾の国民党本部に慰安婦像が設置されましたが、このことを針小棒大に報道し、まるで台湾全土が反日のように伝える論評さえありました。これも一種のフェイクニュースと言っていいでしょう。

中国の歴史と文化には、古来「騙の文化」があります。これを研究している中国人学者も多くいます。つまり、いわゆる「鳥龍消息(フェイクニュース)」は最近出てきたものではなく、中国では昔からあるもので時代とともに進化し続けてきたのです。中国の俗謬には「人民日報は人民を騙す。中国では詐欺師だけが本物だ」というものがあるように、中国社会は嘘まみれ、人間不信社会なのです。このことについては、あの朱鎔基元総理も嘆いたことがありました。

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