国語の基本的な目的は「読み書きを覚えるため」ですが、単にそれだけと捉えていては深みも広さも実感できません。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、ベストセラー『声に出して読みたい日本語』で有名な齋藤孝明治大学教授が、精神の涵養にも関わる国語教育の大切さについて、わかりやすく解説しています。
なぜ、国語が重要なのか。その本当の理由
日本が明治時代から近代国家の仲間入りを果たした背景にあった、国民の高い国語力。その根幹をなす国語教育が、いま危機的状況にあると警鐘を鳴らすのが、齋藤孝さんです。
国語が人生の基礎をつくると語る齋藤さん。本日は国語の重要性に関するお話を紹介します。
特集「国家百年の計」 齋藤 孝(明治大学教授)
国語の重要な点は精神の涵養に関わっていることです。
江戸時代の寺子屋は素読によって人間性を高めるという側面が非常に大きかったのですが、国語という教科もまた、ものの考え方や人格の成熟を担います。単純な言葉のトレーニングではなく、文学を趣味として読むのでもない。人間性と言葉をセットにして成長させていくことを促してきたのです。
国語のテキストに採録されるような文章は非常に深みのある多義的な内容を含んだものが多いので、議論していくとより深さが増していきます。それゆえ知的な対話を喚起する素材になるのです。
国語は人間性の成長とは無関係であり、日本語という言語を教えればいいのだと考える方もおられますが、教科書が人間の精神性と切り離して言葉だけを教えるドリルのようなものであるとしたら、あまりにも物足りないと言わざるを得ません。むしろ人間性を養うという重要な役割を担ってきたと考えるからこそ、国語が重要なのだと言えると思うのです。
人間性を養うという点では道徳という教科もあります。しかし、道徳は国語ほど時間数が多くないし、教える内容もあまりはっきりとしていません。道徳に限定して人間性を養うというのも狭い感じがします。その点、国語はいろいろな文章からいろいろな意味を受け取ることができます。クラス全員で話し合って意味を見出していくという作業を行えば、対話もでき、思考の深化も期待できます。