これで組織的隠蔽を否定できなくなった
【東京】は1面トップに3面の関連記事2本とQ&A、5面社説。6面には国会論戦のポイント。見出しから。
1面
- 厚労省 崩れた中立性
- 統計不正 全面再聴取へ
- 「身内調査」7割
- 厚労相 説明変遷 責任問題に
3面
- 景気拡大 揺るがす統計不正
- 発覚後も18年賃金過大伸び率公表(以上、Q&A)
- 水増し報告 厚労省が原案
- 障害者雇用 身内の関与常態化
- 監察委員が証言「大急ぎで調査」 勤労統計不正
uttiiの眼
1面トップは各紙報じている「身内7割」についての記事。リードは、新聞記事の書き方として大変巧みなものを感じる。
……対象37人のうち、身内の同省職員のみでの聴取は7割近い25人に上り、同省が組織的隠蔽を否定する根拠とした監察委調査の中立性は完全に失われた。同省は監察委の外部有識者による調査を全面的にやり直す。
「同省が組織的隠蔽を否定する根拠とした監察委調査」と形容することで、「調査の中立性否定」によって「組織的隠蔽」が否定できなくなったのだという意味が強く出されている。意味を強く出しすぎることには弊害を伴う場合もあるが、このケースでは正当な関連付けだろう。
後段でもこの「関連付け」は引き継がれ、「根本氏は監察委について『官僚はメンバーから外し、中立性、客観性を明確にした』と強調してきたが、実際は外部有識者の目が入らないまま多くの聴取が行われ、組織的隠蔽はなかったと結論付けたことになる」と言っている。
2面のQ&Aは、《朝日》のところで書いた「二重の水増し」についてのもの。「不正」の影響以外に、「調査対象の変更」という要因があり、2つのトリックを剥ぎ取ると、18年6月の伸び率は3.3%から1.4%にまで下がり、この1.4%の方が実態に近いと総務省の統計委員会も認めているという件。グラフを使った説明が分かりやすい。
2面にはもう1つ記事があり、こちらは「統計不正」とは別個の問題だが、「身内の関与」が常態化した同省の現状をよく表す事例として取り上げられている。国の機関の8割で障害者雇用数が水増しされていた問題でも、「第三者検証委員会」の報告書原案は、厚労省が自分で作成していたという事実が判明したという。厚労省はこの場合、障害者雇用という政策を推進、所管する立場であると同時に、水増しを長年見過ごした当事者でもある。さすがに《東京》もそこまでの表現は使っていないが、私が代わって示すとすれば、「被疑者」が取り調べをするようなものと言ったら分かりやすいだろうか。
あとがき
以上、いかがでしたでしょうか。
かなり「統計不正」についての論点が煮詰まってきました。まだ“小出し”の感じですが、新しい事実も出てきています。また、これは飽くまで予想の範囲ですが、根本大臣は持ちこたえられないかもしれませんね。「薬害エイズ」でも「消えた年金」でもそうだったように、厚労省は省内各所に大中小のボスが潜んでいて、他省庁以上に魑魅魍魎が跋扈する世界。あそこでガバナンスを利かせるには、相当な腕力が必要でしょう。菅直人さんや長妻昭さんのような剛腕が入り込んで、周囲を震え上がらせるようなことでもしないと、動くものも動かないということはあるかもしれません。根本さんでは無理、なのかもしれません。
image by: 根本匠 - Home | Facebook