元国税調査官が暴露。「日本の法人税は世界的に高額」という大嘘

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かねてから、日本の法人税は世界的に見ても高く、税率を下げなければ企業が海外に逃げてしまうなどと言われますが、果たしてそれは真実なのでしょうか。そんな疑問に答えるべく、元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で「法人税のからくり」を徹底検証しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

「日本の法人税は世界的に高い」というウソ

このメルマガでも何度もご紹介してきましたが、これまで消費税が増税とされると必ずセットのようにして法人税の減税が行われてきました。消費税が導入された1989年、消費税が3%から5%に引き上げられた1997年、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年。そのいずれも直後に法人税の引き下げが行われています。

その結果、かつては19兆円もあった法人税収は現在10兆円前後になっています。現在の消費税の税収は17兆円程度ですので消費税の半分以上は法人税の減税分の補填に充てられていることになります。

こういうことを言うと、「日本の法人税は世界的に見て高いから、下げられてもいいはず」と反論する人がいます。が、その考えは、財務省のプロパガンダにまんまとひっかかっているのです。日本の法人税は、「名目上の税率」は非常に高く設定されていますが、「事実上の税率は驚くほど低いのです。

現在、日本の法人税率は23.2%(国税)です。この法人税率は、確かに先進国の中では決して安くはありません。イギリスやドイツの方が低く、アメリカも減税を行っているので日本よりも安くなっています。だからこれを根拠に「日本ではもっと法人税率を引き下げなくてはならない」と主張する御用学者も多いのです。

が、これは「名目の法人税率」の話です。日本の場合、名目の法人税率は高く設定されていますが、様々な抜け穴があるために、実質の法人税率は著しく低いのです。不思議なことに日本の御用経済学者のほとんどは、この日本の法人税の抜け穴について言及したり、研究したりしている人はほとんどいません。ただただ名目の法人税率だけを振りかざし、「日本の法人税は高い」と吹聴しているのです。

日本の実質的な法人税率は、本当に驚くほど低いのです。下の数値は、法人統計調査から抽出した日本企業全体の「経常利益」と法人税収を比較したものです。

  • 2013年 経常利益72.7兆円  法人税収10.5兆円  実質法人税率14.4%
  • 2015年 経常利益80.9兆円  法人税収10.8兆円  実質法人税率13.3%
  • 2017年 経常利益96.3兆円  法人税収12.0兆円  実質法人税率12.5%

 

※経常利益は財務省発表の法人企業統計調査より抽出、法人税収も財務省発表資料より抽出

これらはいずれも、政府が発表しているデータであり、誰でも簡単に確認することができます。これを見ると、日本企業は経常利益に対して法人税は10%ちょっとしか払っていないことがわかるはずです。現在の日本の法人税の名目税率は23.4%なので、だいたい半分しか払っていないことになります。つまりは、日本の実質的な法人税率は10%ちょっとです。これは先進国では異常に安く、先進国以外の世界的に見ても非常に安い部類です。タックスヘイブンのレベルだといっていいでしょう。中国は「半タックスヘイブン」と言われていますが、だいたい中国と同じくらいの税率なのです。これを見ると、絶対に日本の法人税は高いなどとは言えないはずです。

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