韓国に押された「失格」の烙印。交渉のプロが読む米朝会談の裏側

 

評価できるとすれば、2月末以降停止していた協議が再度スタートするということと、間接的に米中間の摩擦を“和らげる材料”として機能したという点でしょう。しかし、肝心の問題解決(非核化)までの道のりはまだまだ遠いと思われます。

今回の米朝首脳会談の開催を受けて、国際情勢における“重点”、とくにトランプ大統領にとっての外交的な重点が変化したように思います。 3月~6月にかけては、イランに対する非難と圧力を強化し、最近は一時は開戦10分前という状況までエスカレートしていましたが、その背景として、「大統領選までに北朝鮮に係る情勢が進展しそうにない」との憶測がありました。

ゆえに、イスラエルやサウジアラビア、アラブ首長国連邦など、比較的アメリカの対イラン姿勢に支持を得やすい『イランとの緊張関係』を、第1期の外交的成果として選択していたようです。

北朝鮮は一向に言うことを聞かず、最近はアメリカの批判に戻ったし、中国とのせめぎ合いも解決の糸口が見えないとの判断からのイラン“攻撃”だったわけですが、今回、中国の“仲介”を得て、第3回米朝首脳会談を開催でき、また協議のプロセスを再開したことで、国内に対するアピール材料が見えてきたため、再度、ディールメイキングの重点を北朝鮮に移したとも見ることが出来ます。

もちろん、大阪で開かれたムハンマド皇太子(サウジアラビア)との2国間会談の場で、対イランで協調することは確認しますので、イラン問題はアジェンダに乗ったままでしょうが、北朝鮮との協議がゆっくりだとしても進んでいる間は、アメリカからイランへの攻撃はマシになるかもしれません。(ボルトン補佐官がそれで静かにしているとは思えませんが、恐らくトランプ大統領としては、イラン問題はボルトン補佐官に任せ、北朝鮮は自分とポンペオ国務長官という図式なのかもしれません)

今回の板門店での会談は、トランプ大統領のdeal makingという形でのアメリカ外交の焦点がまた変化するきっかけになったことは間違いないかと思います。あとは、「どれくらいのtime span」で「何を具体的に合意する」のかというポイントを、大統領選が本格化するまでにはっきりさせる必要があるのと、それをいかに「アメリカの国内イシューや国家安全保障問題に絡めるか」という戦略の作りこみが大事になってきます。

また、今回の会談の実現を受けて、再度、中国が朝鮮半島問題を左右する立ち位置に復帰したことと、プーチン大統領の「北朝鮮問題はロシア抜きでは解決しない」との発言にもあるように、中ロ間での微妙な緊張関係も再度浮かび上がってきました。

しかし、同時に、はっきりしたことは、朝鮮半島の統一を悲願とする韓国と文大統領は、この“ゲーム”からは完全に離脱した(離脱させられた)という悲しい現実でしょう。

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