選択と集中はもう古い。これからは「収拾」をキーワードにすべし

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大型チェーン店の「侵攻」により痛手を被りながらもなんとか商売を続けてきた地域密着型のショップですが、ここに来て後継者不足などで廃業してしまう店舗も増えてきています。そこに目をつけたのが、無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さん。梅本さんは今回、ビジネスの定石「選択と集中」の次の一手として「収拾」、つまり廃業したお店の顧客の取り込みを提案しその具体的方法を記しています。

選択と集中から収拾へ

「選択と集中」という言葉がブームになったことがあります。一時、地域のスポーツショップにとっても「選択と集中」がキーワードでした。ですから、多くの店が取扱商品を絞り始め、一つもしくはいくつかの種目に特化したお店に転換していきました。ここ10年くらいのことです。

例えば、野球専門店として商品を絞り込んだお店があちらこちらに出来ました。サッカー専門店、バレーボール専門店、ラグビー専門店、卓球専門店、バドミントン専門店など、取り扱い種目はさまざまです。どうしてこうした形態のお店が増えていったのでしょう。

一番の原因は、大型スポーツチェーンの攻勢です。広い売り場とあふれるばかりの商品と安売りで、恐竜のように地域を踏みつぶしていきます。中小のスポーツショップは、たまったものではありません。生き残るために、それまで扱っていた商品の中で得意な種目を選んで絞り込むしかなかったのです。

そのため、多くのお客様を失うことになってしまいました。それと引き換えに、品ぞろえの深いお店になります。初心者ターゲットの大型店に対して、中級者上級者により高度な専門知識やサービスを提供出来るようにもなりました。もう、大型店に対抗して値引きをする必要もありません。

このように、「選択と集中」は中小スポーツショップにとってはとても効果的な方法でした。

潮目が変わる

ところが、最近その潮目が変わりつつあるようです。どういうことでしょう。

実はここのところ、「選択と集中」を迫られる元となった大型店の勢いが衰えてきています。おそらく、その原因の一つは「オーバーストア」です。地方では、少子化や高齢化でスポーツをする人が減ってきています。それなのに、相変わらず出店を続けているのは、恐竜と同じで食べなければ死んでしまうからです。しかし、今までと同じように売れ続けるはずがありません

原因は、その他にもありそうです。例えば、スポーツ用品はセルフ販売で満足する人たちばかりではありません。また、大型店の売場のスタッフの商品知識では用を足せない競技者がいます。だからこそ、競技専門店がいくつも誕生したのです。

また、近ごろ流行りのネット販売にも同じようなことが言えます。確かに、スポーツ用品のネット販売はずい分と伸びました。ところが、所詮ネット販売の武器は「安い価格」です。もともとそれほど粗利益率の高くないスポーツ用品が価格競争に走ればその行きつく先は見えています

そして、スポーツ用品はブランドの信用が大切です。ネット販売で価格を乱されてしまったメーカーさんがその市場から逃げ始めたのは当然でしょう。ネット販売に力を入れていたスポーツショップにとってはこの政策は大きな痛手です。

このように、スポーツ用品のネット販売の限界も見えてきました。そんなスポーツ用品市場ですが、最近少し違った動きが見えて来ています。それは、長年続いてきたスポーツショップの廃業です。廃業の原因はいろいろですが、経営者の高齢化や後継者不足がその多くを占めるでしょう。何とかしぶとく生き残ってきましたが、とうとう体力の限界に達してしまったというお店もあります。

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