7月31日には東北北部地方も梅雨明けし、全国的に夏本番を迎えた日本列島ですが、今後さらに気を配らなければならないのが熱中症予防。具体的にはどのような点に注意を払えばいいのでしょうか。保健学博士で気象予報士の資格も持つ河合薫さんが、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』に詳しく記しています。
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年7月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
急激に増えた熱中症死亡者数
梅雨明けした途端に猛暑が続いていますが、欧州では鉄道架線が損傷するほどの熱波に襲われています。25日にはパリで42.6℃を観測し、約70年ぶりに記録を更新。ドイツ、ベルギー、オランダでも40℃を上回り、観測史上最高気温を更新しました。パリの緯度は48度で、札幌の43度より高いので、いかに異常な暑さかお分かりいただけると思います。
異常高温と温暖化を直接的に結びつけることはできませんが、世界各地で最高気温が更新され続けているのは事実です。そして、その異常な暑さで脅かされているのが、私たちの「命」であることを忘れてはなりません。
熱中症による死亡者数は年によって差がありますが、10年単位でみると1990年代は94年の579人が最も多く、他は150人~200人程度でしたが、2000年代に最も多かったのは07年の904人で、他は300人~500人程度、2010年には1,731人を記録し、11年948人、12年727人、13年1077人、14年529人、15年968人、16年621人、17年635人と、軒並み増えていることがわかります。
熱中症による死亡者数が急激に増えた原因は、異常高温が頻発していることに加え、都市化によるヒートアイランド現象、さらには高齢者が増えたことも関係しています。
例えば、全体の発症数を見ると、成人ではスポーツや屋外での労働作業中に発症しているのに対し、10歳未満の子供や65歳以上の老人では最高気温が33℃以上になると病院に運ばれる人が急増。天気予報で最高気温が30℃だったら「熱中症注意報」、33℃以上だったら「熱中症警報」と考えなくてはなりません。
では、なぜ子供と老人に熱中症が多いのか?
子供の場合は汗の量に関係しています。汗腺の数は子供も大人も変わりませんが、汗腺の分泌能力、つまり汗が出る準備ができている汗腺の数は子供の場合、少ないのです。具体的には、8~10歳の子供は大人の約40パーセントの汗腺からしか汗が出ないため熱が放出されず、熱中症をおこしやすい。
一方、高齢者の場合、多いのが脱水症状です。もともと人は歳を重ねると脱水症状をおこしやすくなるのですが、のどが渇く感覚もにぶくなっていくので、水分補給を怠るようになります。
さらに、体温調節への反応も遅くなり、体に熱がこもりがち。ですから、とにもかくにも水分を多量にとることが必要不可欠で最低でも1時間にコップ一杯の水分をとるように心がけてください。
また、近年増えているのが、自宅で、しかも深夜から明け方に熱中症になるケースです。
エアコンの室外機から出される排熱や車の排気ガス、コンクリートやアスファルトからの照り返しにより都市の気温が郊外より高くなるヒートアイランド現象は、深夜の気温を押し上げます。
木や緑があれば夜には空気を冷やしますが、コンクリートやアスファルトが日中に蓄積した熱を夜に放出することに加え、冷房機器の使用により都心の夜は冷えるどころかどんどん暑くなってしまうのです。
ですから、25度以上の熱帯夜が予想される日は、冷房はつけたままで寝ないと熱中症をおこしかねません。