「断トツ1位」と書いたことある人が「頭痛が痛い」を笑えない訳

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丁寧な表現をしているつもりなのに、むしろおかしな日本語になってしまうこと、案外多いようです。大事なお客様や目上の方へのメールのなどでは、とくに失礼の無いよう心がけたいもの。今回の無料メルマガ『神垣あゆみメールマガジン』では「意味が重複している言葉」を取り上げ、具体例を示しながらどう直せば良いのか丁寧に解説しています。

疑問な言葉 立場に立つ

後で後悔する

犯罪を犯す

募金を募る

これらは、意味が重複して使われている言葉です。

「後悔」は「後で悔やむ」ことなので、「後では不要。「犯罪」は「罪を犯す」ことなので、「を取って罪を犯す」に。「募金」は「寄付金などを募る」ことなので、「募金を行う」「寄付金を募る」という表現が適切です。

このように同じ意味の言葉を繰り返して使っていることがあります。メールなどでよく見かけるのが「立場に立って」。例えば

お客様の立場に立って運営方法を考えています。

という一文。この場合の「立場」は「その人が置かれている境遇条件地位など」を指しますが、もともとの意味は、その字の通り「立つ場所」。

お客様の立場になって運営方法を考えています。

お客様の立場で運営方法を考えています。

のように「立場に立つ」は「立場になる」「立場で」と書き換えられます。

疑問な言葉 距離感を感じる

距離感を感じさせない対応を心がけています。

この一文のように「~感を感じる」という表現が意外と多く使われています。この例でいうと「距離感」は「距離を感じる」ことを意味するので、「距離感を感じ」というのは同じ意味の言葉の繰り返しになります。

距離感のない対応を心がけています。

距離を感じさせない対応を心がけています。

とするのが適切です。

ほかに「違和感を感じる」「嫌悪感を感じる」「充実感を感じる」なども、ついそのまま使ってしまいがちです。「~感を感じる」を「~感を覚える」「~感がある」と書き換えると意味が重複しません。

これに関連して要注意なのが、「自覚を覚える」です。「自覚」は自分自身の立場状態能力などをよく知ること。感じるを意味する「覚える」が続くと重複表現になります。

「役者という仕事に自覚を覚え、熱を入れて取り組んでいる」という一文は、「役者という仕事を自覚し、熱を入れて取り組んでいる」となります。

疑問な言葉 断トツ1位

日本選手が断トツ1位でした。

この一文にある「断トツ1位」。私も無意識に使っていたのですが、実は意味が重複しています。

「断トツ」が何の略かご存じですか?「断然トップを略して断トツ」。脱サラが「脱サラリーマン」の略であるように、「断トツ」も日本語によくみられる略語の一種で、それが定着した言葉のようです。

そうすると、「断トツ1位」は「トップ」と「1位」の意味が重なるため、「日本選手が断トツでした」と書くのが適切。1位であることをより強調したい場合は「日本選手が大差で1位でした」のように「断トツ」に代わる表現に言い換えることもできます。

「断トツ」は俗語の一種になるのかもしれませんが、迫力を伝える表現として、使いたくなる言葉ですよね。「断」に関連して、次の一文も注意。

間違いないとはっきり断言できます。

断言はっきり言い切ること」という意味があるので、「断言」の前に「はっきり」は不要です。この場合は「間違いないと断言できます」、あるいは

「間違いないとはっきり言えます」と書き換えられます。

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仕事上手はメール上手! 「ご返事」「お返事」どちらが正しい?
メールで間違いやすい敬語の使い方は? など、気になるビジネスメールの基本やマナーをご紹介。2005年1月創刊、まぐまぐ大賞「ビジネス・キャリア部門」入賞。「迷わず書けるメール術」など、メール対応関連の著書8冊刊行。まぐまぐ!から有料メールマガジン「仕事のメール心得帖」も配信

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【著者】 神垣あゆみ 【発行周期】 平日日刊

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